狐の窓

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「それっておばけ……？　

捕まって、鏡の中に連れてかれなかったの？」

「そしたら、わたし今ここにいないって。

実はね――」

マホちゃんが振り返ると、そこには、担任の瀬川先生がびっくりした顔で立っていたそうです。

こんな時間に女の子が校舎に残っているのを見つけて驚いて、誰なんだろうと思って、思わず肩つかんでしまった。振り返った女の子の顔を見たら、自分のクラスのマホちゃんだったから、二度びっくりした、と先生は言ったそうです。

オチまで聞けば、「なあんだ」という話です。

でもそれなら、なぜマホちゃんは、三日も学校を休んだのでしょうか？

「あの時、狐の窓から見えた瀬川先生の顔、真っ黒なモヤモヤだらけだった。

花子さんの女子トイレで見えたのと同じ。

プールの女子更衣室で見えたのと同じ」

その姿があまりに気持ち悪くて、ショックで体調を崩してしまったのは本当なようです。

眠っては夢を見て、夢を見てはうなされて。

「でも、そのうち、夢の中で奇妙なことを思い付いたんだ」と、マホちゃんは言いました。

それは、女子トイレとプールの更衣室にあった黒いモヤモヤが、瀬川先生の顔に取りついていた……のではなくて、

先生の方が、あの黒いモヤモヤの大元なんじゃないか、ということでした。

それって、変な思いつきです。

いったい、どういうことでしょうか？

マホちゃんは昨日、学校をお休みしながら、実はこっそりお母さんと一緒に登校して、校長先生に内緒の相談をしたんだそうです。

その内緒の相談とは。

「女子トイレとプールの女子更衣室に、『なんか変なもの』がある気がするから、心配で学校に行けない。調べてもらえませんか？」というものでした。

ちなみに、マホちゃんのお母さんは、PTAの会長さんです。

びっくりした校長先生は、さっそくふたつの場所を調べさせました。

すると――。

「おばけが出てきたの？」

「ううん。

出てきたのは、ビデオカメラ」

そう、女子トイレとプールの女子更衣室からは、盗撮用の隠しカメラが出てきたのでした。