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呪い・祟り

kanaさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

ドリームボックス 2.0
長編 2023/12/10 19:49 8,068view
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あれからもう半年以上の月日が経とうとしている。

ペット処分用のガス室、通称『ドリームボックス』から生きのびて逃げた犬がいた。
全身真っ黒のミックスで、最初の飼い主はその犬に人間の肉を与えるために殺人を犯し、逮捕されていた。

彼の話では『悪魔の血』を受け継ぐという犬を海外から輸入したのだという。
それが本当の話かどうかを確かめるすべはない。死刑を免れたいがための彼の作り話の可能性もある。以降は弁護の方針なのか、そのような世迷言が世間に漏れ出てくることは無くなった。

一見バカバカしく聞こえるこれら悪魔や呪いと言ったオカルトだが、世界には今だに呪術のために人をさらって殺すような文明が存在するのも事実で、我々には想像もできない世界がこの世にはまだある。・・・あの犬は、そんな場所で生まれたのかもしれない。

偶然なのか、必然なのか、それは誰にもわからない。が、真実はひとつだ。
処分される寸前のその黒い犬を我々NPOが救い出し、譲渡会で引き合わせたはずの二家族6人が相次いで事故に遭い不慮の死を遂げ、そして最後にドリームボックスから逃げる際に職員1名が頭を打って亡くなっている。最初の殺人犯がこの犬のために3人を殺したのも加えると、判っているだけで10人が犠牲となった事になる。

ただ、こうして話していても、それが本当に犬のせいだと言い切れるものでもない。
単に不運な事故が連続しただけ、とも言えるし、連続する事象を不運で片付けてよいのかという疑問もわく。正直、我々にはわからない。

NPOメンバーだった男性1名が退職してまで犬を追跡すると言って出て行った。
彼の消息も犬の消息も、行方不明となってそれ以降はつかめていない。
警察は今もこの1人と1頭を探している。

・・・・・・

海にほど近いとある村の駐在に、一報が入ったのは朝方だった。
「見かけない怪しいキャンパーがいる」という知らせに、自転車を漕いで現場へ向かう。
最近、水や食料を恵んで欲しいと家々を回っている怪しい男がいると、通報が相次いでいた。その男かもしれない。

「あー、もし、あなた、こんなところでキャンプですか?」それらしき男を見つけた駐在が職務質問をする。男は少し慌てた様子で身支度を整えながら応える。

「あぁ、スイマセン。ここ私有地でしたか?勝手に申し訳ありません。すぐに移動します」
そう答えた男の横には、黒々とした狼のような大きな犬が一頭寄り添っていた。

「ねぇその犬、大丈夫? 咬まない?」駐在がややビビりながら聞く。腰が引けている。

「あぁ、ぜんぜん大丈夫ですよ。優しい犬なんです。なぁ、クーシー」

クーシーと呼ばれたその真っ黒な犬は、舌を出し、愛嬌のあるつぶらな瞳で駐在を見つめていた。いつしか駐在もこれは大人しい犬なのだとわかり、撫でてみた。犬が好きだからではない。こうして男の様子を観察し、あるいは男の緊張感を緩めて態度を軟化させ、話をしやすくするためである。

「かわいい犬だねぇ。この犬と一緒にキャンプしてるの? どこから来たの? あっ、一応仕事なもんで聞くけど、なにか身分証とか持ってます?」

「身分証・・・えっと、身分証、身分証どこやったかな・・・いやオレ、キャンプしながらこの犬と一緒に全国を歩いてるんですヨ・・・」

「へぇ~。冒険家みたいだね。水とか、食べ物とかどうしてるの?」

「えぇ、それは山で採ったり、釣りしたり、あとは優しい人に恵んでもらうこともありますけどね。ほんと、人情ってやつに助けられてます」

何日風呂に入っていないんだろう。犬と同じような匂いをさせ、ひげはぼうぼうで日焼けして浅黒く、だが体は筋肉質でガッシリしているようだった。

「あぁそうなんだぁ・・・でもね、山は危ないから気を付けてね。この辺はクマは出ないけど野犬は多いからね」

「ああ、大丈夫です。クーシーがいると、熊も寄ってこないんですよ」

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コメント(3)
  • kamaです。以前書いた犬のお話、ドリームボックスの続編を書かせていただきました。
    前作は割と人気作品のようで、多くの朗読者様にも読んでいただきました。感謝です。
    そのまま終了してもよかったのですが、韓国でも朗読され人気になったようで、
    別作品の「母の生まれた謎の集落」を書いたときにコメント欄で韓国のお話みたいと言われたのが
    ヒントとなり、一度韓国がらみの作品を書いても良いかなと思い、この呪われたブラックドッグを
    韓国に渡らせることにしました。・・・と言いたいところなのですが、本編ではご覧の通りとなりました。ボクはこのつづき「ドリームボックス3.0」は書くつもりはありませんのでこれで終わりにしたいと思いますが・・・どうなんですかね。韓国と言えば橋が折れたりビルが倒壊したり、金融危機に陥ったり・・・もしかして、もうブラックドッグたちはとっくに渡っているのかもしれないですね・・・。

    2023/12/10/19:58
  • わたしとしては、呪われたブラックドッグがライフルで狙撃され良かったと思ったのに、お腹に赤ちゃんを宿しながら・・・続きがあると思いきや、なんと3.0が無いとはとても残念。
    しかしながら、面白かったです。

    2023/12/13/02:29
  • ↑コメントありがとうございます。
    まぁ3.0のお話は韓国が舞台になるでしょうからね。ボクは韓国は行ったこともなければなんの知見もありませんので、リアルにお話を書いていくことができませんし。
    まぁでも、3.0希望の声が多数寄せられたら、乗せられやすいタチなので韓国取材はじめちゃうかもしれませんけど~。・・・でもまぁとりあえずこの辺にしときます。
    ・・・続き書きたい人に書かせてあげるって手もあるかなぁ・・・

    2023/12/13/21:20

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