変化【へんげ】
投稿者:ねこじろう (147)
─モスマン、、なんだそりゃ?
俺がその意味不明な落書きに軽く突っ込みを入れていると、何処からだろうか人の声がする。
そのままの姿勢で息を凝らした。
「…………」
始めのうちはほとんど聞き取れなかったが、さらに息を凝らし耳を澄ますと微かに声が聞こえてくる。
「アア……キ………イ……」
男の声だ。
しかもどうやら奥の個室からのようだ。
─いったい何言ってんだ?
気になった俺は立ち上がると、とうとう右側の仕切り壁に耳を近付ける。
するとようやく、声に意味が現れてきた。
「アア……キモチ………イイ……キ……モチ……イイ……」
─何だと、気持ち良いだと?
いったい何やってんだ?
すると、
ゴトン、、、
ドキリとした。
どうやら奥の扉が開いたようだ。
俺はその場に立ったまま再び息を殺す。
何故だろう心臓が早鐘のように脈打っている。
─個室から出てくるのか?
俺はそのまま様子を伺う。
それから数分が経過した。
だが奥のトイレからは誰も出てくる気配はない。
相変わらず、ただひたすら呪文のように同じ言葉を繰り返している。
「アア……キモチ………イイ……キ……モチ……イイ……キモチイイ……キ………」
怖かったが、ずっとこのままというわけにはいかないので個室を出ることにした。
出来るだけ音がしないよう鍵をあけると、じんわりと扉を開いていく。
右側を見ると、奥の個室の扉はやはり開いていた。
その個室の天井辺りには4、5匹の蛾が飛び交っている。
このままトイレから脱出しようと思ったのだが、ここで変な好奇心が沸き上がってくる。
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