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呪い・祟り

prudence1968さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

生えていたもの
短編 2023/10/28 22:08 3,428view
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やっとの思いで車にたどり着き、調査用具をぶちこみ、運転席に座った。
「あー、あせった。とりあえず何とかなったかな。」と、車に乗って少し安心し、エンジンをかけヘッドライトを点けた。
「ヒッ」。
まじでビビッた時は、「ギャー」とか出て来ないらしい。
白装束の男がこっちを見て立っているではないか。
15か20m位離れていて、雨でちょっと見づらかったが多分男。
というかまぁ、人間じゃないだろうなと。

人間だったとしてもおかし過ぎる。
寿命が縮む思いとはこのことだと感じた。
心臓を冷たいものが流れる感覚があった。
男がいる方向は帰り道とは反対だったので、無我夢中でバックして車を切り返した。
切り返しをこれほどわずらわしく思ったことはなかった。
車を発進させバックミラーをちらっと見ると、男がさっきより近寄って来ていたことが分かった。

そこから先は、ヘアピンカーブも多かったので、何かの話で読んだように、人間がそこをショートカットして車より速く移動して来るのではないかとかあせっていた。

というかあれは人間じゃないだろうから、そんなことはそもそも関係ないかも、とも思った。
その後は、バックミラーに誰かが写ることも、後部座席に誰かがいることもなく、とりあえず山林地帯を抜け出ることができた。
いつもはかけないラジオを大音量で鳴らしながら帰ってきたが、はっきり言ってラジオは耳に入って来なかった。

壁から人間の手が生えていたという話をよく聞くが、山林の中の方がむしろそういうことがあるのかも、と思った。
もし、あの時、よく確かめず無意識にあの手をつかんでいたら、一体どこへ連れて行かれていたのだろう。
近寄って来た男と話をしていたらどうなっていたのだろう。
神様のお怒りなのかどうかも分からない。
問題は、この仕事は継続調査なので、あの場所へあと数回行かなければならないことだ。
その人には悪いが誰かに交替してもらうか、少なくともこの地点を明るい内に済ませることになるだろう。

2/2
コメント(1)
  • 😱
    山は陽が落ちる前に帰らないと。

    2023/10/30/10:48

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