「ウリ坊焼けたでぇ~」後ろで声がする。
「あぁー、わしの分とっといてなー」五郎さんが火の前にいるお婆さんに向かって言う。
ウリ坊とはイノシシの子供のことだ。あのまま大きくならなければ最高にカワイイのにと思ったことがある。おそらくそれをキャンプファイヤーの火で焼いていたのだろう。
なんともたくましい話だ・・・そう思って火の方を見ると・・・
(ん??・・・アレは・・・)確かにお婆さんが火の中からウリ坊らしき4つ足の動物の肉を引っ掻き棒のようなものでかきだしているが、その奥に別の動物も焼かれている・・・
いや、あれは動物なのだろうか・・・ボクには手足を縮こませて丸まっている子供のようにも見える。だが炎の中で、しかも頭が無いのでいまひとつ判然としない・・・判然としない?・・・そうだろうか?頭が無いというのは、頭は切断してサナトリウムの地下に保管しているからではないのか!?
もはやボクの頭は嫌な想像でいっぱいだ。いったいコイツらはここで何をしているんだ!?
ボクは声を大にして叫びたかった。だが、目の前には鉄砲を持った人間がいる。万が一にもここで撃たれたら、ボクらはなんの証拠も残さず消されてしまう可能性がある。だからボクはすべてを喉の奥に押し込んで、とにかく一刻も早く母を連れてここを去りたいと思った。
「また今度な~、腰が治ったらまた来るからな~」母がのんきにボクの背中で挨拶している。
・・・いや、これで良い。ボクらは敵じゃないんだと相手が認識してくれているならそれに越したことはない。とにかくクルマまで行ければ。そんな思いでもと来た道を戻って行く。
途中五郎さんが何かを話し掛けてきて、母親が返していたが、なまりがひどすぎて何を言っているのかわからない。・・・そうこうしてる間にやっとクルマまでたどり着くことができた。一安心だ。ボクは五郎さんに形ばかりのお礼を言って別れた。
狭い所でクルマを何度か切り返して、やっと帰路に就く。バックミラーに映る五郎さんを見てギョッとした。鉄砲でこっちを狙っている・・・いや、まさか・・・ただの冗談であってくれ・・・。やがてクルマは曲がり道に入り、五郎さんの姿も見えなくなった。
「ふぅ、助かった・・・」一気に緊張が解ける。いや考えすぎだったのかもしれない。ボクらを撃とうと思えば、クルマに乗る前にいつでもやれたはずだ。きっとただの思い過ごしだ・・・。自分にそう言い聞かせて、悪路の山道を下っていった。
・・・・・・
なんとか下山して、海の近くのホテルにたどり着いた。
なんだか頭の中がまっしろで、ここまでどうやってたどり着いたのか記憶がない。
助手席で母親が何か言っていたのだが、全部上の空で適当に生返事していたようだ。
どうやら軽くパニックになっていたようだ。
だが、ホテルの部屋に入って浴衣に着替えると安心して、今までの事が夢だったかのように思えて、つい油断してしまっていた・・・。
その日の晩、母の容態が悪くなり、意識が混濁し始めていた。
フロントに電話をし、救急車を手配してもらうことにした。
近くの救急病院に運んでもらい、緊急入院となった。
妹にも電話をしたが、もう時間的にこちらに来る術がない。
深夜にはもう母は危篤状態となり、せめて明日、妹がこちらにくるまでは・・・とお願いし、心臓だけは動かしている、という状態になっていた。
翌日、妹が到着し、二人で一緒に母を看取った。まさかこんな旅先でこんなことになるとは、想定していなかった。
「母さんの最後の心残りが生まれ故郷に帰ることだったから、帰れてほっとしたのかもね」
妹がそんなことを言う。心残りがあって死ねないという話はよく聞くが、それが本当だとしたら、願いが叶えばもう人は安心してあの世に行けるということなんだろうか。
「その、母さんが言ってた山奥の集落って、結局どうなったの?」妹がそうボクに問いただした時、病院の待合室にいた人たちが一斉にこっちを見た気がした。・・・辺りを見回すが、気のせいだったか、怪しい雰囲気は消えていた。神経が高ぶり過ぎているのだろうか。
「そ、その事だけど、話すと長くなるから家に帰ってから詳しく話すよ」
そう言って妹の質問をはぐらかした。
kamaです。今回もお読みいただきありがとうございます。実は、これを書いている最中に首にものすごい痛みが出るようになり、10日の日は会社を休んで形成外科へ行きレントゲンを撮ってもらいました。骨に異常はなく、原因不明。とりあえず薬をもらってきたのですが、もう本当にひどい痛みで、頭が首から落ちてしまうのではないかという痛みで、寝返りを打つときは両手で頭を押さえながらしていました。医院でもらった薬が効いたのか、その後は回復してきて、やっとこのお話を書き終えることができました。なので予定より2~3日余分に時間がかかってしまいました。
・・・まぁ、霊障じゃないと思います(笑)薬で治りましたからね。
もし、読者のみなさんにも首が痛くなった人が出てきたら・・・その時はタイトルに【霊障注意】って入れます! よろしくお願いします。
凄く読み応えがあるお話でした
↑kamaです。コメントありがとうございます。楽しんでいただけたでしょうか。首は痛くなってませんか??
亡くなった人の首をホルマリン漬けって、奇妙な風習ですね。ちなみに読んだ後、首の痛みは出なかったがヘルニア持ちです。
↑kamaです。コメントありがとうございます。お体、お気を付けください。
読んだ翌日、朝目覚めたら全く右腕があがりません。とりあえず湿布で様子をみて良くならないようなら病院へいこうと思います。年のせいかも。
↑kamaです。コメントありがとうございます。その後右腕はいかがですか? シップならロキソニンテープよりケトプロフェンテープの方が効きますよ!! 他に身体の調子が悪くなった方はいませんか~?? みんな集まれー!! もはやこのコメント欄がサナトリウムだ!!
あっ、そうそう・・・この話に出てくる生首のホルマリン漬けですが・・・主人公も言っているようにホルマリンではなさそうですよね。どっちかというと、ハーブ酒に近いような・・・
rarkです。とても面白かったし、とても参考になりました!!
↑kamaです。rark様!??ひょえ~~コメントありがとうございます!もったいなきお言葉。でもボクなんかまだまだですよ。みなさんのお話を読んですげーなーと思うことが多いです。奇々怪々さんは自由に書かせてくれるところなので安心してもう100話も書いちゃいましたが、まだまだ言葉足らずや逆に言葉が多すぎる部分もあったりで日々いろいろ考えながら書いてます。rark様の作品ももちろん読ませていただいております~~。ありがとうございます。
kamaです。どうやら韓国語のYoutubeチャンネルで朗読されたみたいです。ありがたやありがたや。何言ってるかはわからなかったですが、とても贅沢な作りで感激しました。
何か凄く韓国っぽいな〜とは思ってた
↑kamaです。コメントありがとうございます。ナルホド、これは目からウロコです。そうやって見ると物語全体がなにか怪しげな雰囲気をまとってより楽しめそうですね。お話の中ではあえて地名は出していないし、変に特定されると困るのでフェリーの時間も適当にして、方言もいろいろ混ぜてやってるのですが、なるほど~韓国かぁ~。こりゃー韓国を舞台に1本書いてもおもしろいかもしれないですね。
とても読みやすく読み応えのあるお話でした。
↑kamaです。コメントありがとうございます。もう今までさんざん読みにくいだの話が長いだといろいろ言われてきましたので、読みやすいなんて言われるととてもうれしいです。ありがとうございます。これからももっと精進いたします。
すごく不気味で読み応えがある名作でした
↑kamaです。コメントありがとうございます。お褒め頂き大変感謝しております。
次回作・・・いや、次々回くらいかな~・・・もっと怖いの出します。お楽しみに。
夢にまで、でてきそうな怖いのお願いします。
とても面白い内容でした
読み終わったらちょと首が痛くなってきました。どうすればいいですか?教てくださいKama
さん
五郎って方は女性の人ですか?クビは痛くありませんが…読み終えたアトなんとなくそう思えました。
最後のサナトリウムと周辺の集落跡地の火災は、お兄さんが、火を放ったということなのでしょうか??
とても読み応えのある話でした。
↑そこは描かれていませんから、想像するのが一番楽しいかもね。
もしかしたら、集落の謎の住人達と壮絶な戦いがあったあとでの火災かもしれないし、
お兄さんも死んだのかもしれないし、生きてるかもしれないし、
集落の人間たちはそもそも日本人としてカウントされていない人間なんじゃないのか、とか
いろいろ想像が膨らみます。
実は、集落の人々はサンカだった説