母の生まれた謎の集落
投稿者:kana (210)
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もう何年も使われていないような道路を登って行く。草ぼうぼうで、路面には大量の栗やらドングリ、木の枝が落ちている。たまに腐って倒れた大木もあった。全く整備がされていない。とりあえずそれらをうまく避けながら登って行く。
母が昔暮らしていたという集落らしきものは、なかなか見つけることができずにいた。
母も幼少の頃の事で、風景もすっかり変わっているようで記憶に繋がらない。さもありなん。もう70年以上も前の話だ。昔はもっと木を伐採してはげ山だったらしいが、今はジャングルのように木々が生い茂っている。
ある程度まで来たところで、先へ進めなくなっていた。道と草っぱらの区別がつきにくくなっている。倒木もひどい。スマホの位置情報からすると廃墟のサナトリウムはもう少しのはずなのだが・・・。ボクは意を決して一人で行ってみることにした。廃墟好きである。カメラを片手に撮影準備に入る。
「母さん、悪いけどちょっと待っててくれる?10分・・・20分くらいで戻ってくるからさ」
「わかったよ、気ぃつけて行くんだよ」
母をクルマに残し、道なき道を行く。「見えた!」廃墟らしき建物の一部が木の陰から見える。ヤブも自分の背の高さと変わらない感じになっており、すでに道ではないのだが、目の前に廃墟があるのだ。まっすぐ突き進めばよい。そう思い歩を速めた。
少し開けたところが見えてきた。サナトリウムの全体像がやっと拝める。そう思った時、思いもよらない物に遭遇した。・・・人の列だ。10人ほどだろうか。サナトリウムから出てくるところだった。自分と同じ観光客・・・にしては随分身なりがみすぼらしい。むしろ地元のお年寄りと言った風情だ。まさか、このサナトリウムはまだ利用されているのだろうか?
地元民による廃墟の再利用・・・ありえなくはないが・・・。
最後に出てきたおばさんが写真を携えていた。額縁に黒い帯の子供の写真。
どう見ても葬式用の写真に見えたが・・・。サナトリウムで葬式??
よくわからないが、つい、藪に隠れてやり過ごしてしまった。
集団は、ボクが来たのとは別の小道を通って去って行く。
もしかして、集落がこの近くにまだあるのだろうか?
いろいろ考えながらも、まずは問題のサナトリウムに入ってみることにした。
ドアにカギはかかっていない。中は古くてぼろぼろだけど、廃墟と呼ぶにはあまりに綺麗で、未だ現役で使われている建物と言ってもおかしくはなかった。電気は通電されておらず、もちろん電話もないが、割れている窓はなく、あっても補修されたりして雨風は防いでいる。打ち捨てられたゴミの山のようなものもない。朽ちてはいるが、補修され、こざっぱりしている・・・という印象だ。あきらかにまだ使われている形跡がある。
地下へ向かう階段があったので、そちらへ行ってみる。地下は真っ暗かと思いきや、明り取り用の窓が天井近くの壁にあり、薄暗い程度でよく見える。建物の地面スレスレの位置に小窓があって、それが地下の明り取りとなっているようだ。
中は病院の倉庫といった雰囲気で、なるほどここがサナトリウムだったのがよくわかる。
その1室に入って、おもわず「うわっ!!」と叫んでしまった。そして吐き気が込み上げてきた。そこにあったのは、ガラス製の大きな入れ物。それが棚にずらりと並べられているのだが・・・そのガラス瓶の中には人間の生首が黄色い液体と共に沈んでいた。
「な、生首のホルマリン漬け??」・・・一瞬そう思ったが、ホルマリンは黄色い液体ではなかったような気もする。よく見ると、生首と一緒に細い木の枝や小さな花などがたくさん入れられていた。もしかすると黄色いのはこの花のせいかもしれない。
そんなことより、なんでこんなところに生首が保管されているのか・・・。
吐き気とおぞましさを感じながらも見ていくと、最後に一番新しそうな綺麗なガラス瓶があった。その中には、子供の生首が入っており、液体はまだ新しいのか透明な色をしていた。ボクはそれを見て後ずさりしながら逃げ帰った。そうだ、さっきの写真に写っていた男の子に違いない。きっとそうだ。
ここにある生首は、医療用とか研究用のサンプルとかそんなものではなく、さっきの葬式の列の人たちがここへ運び込んだものに違いない・・・なぜこんなことを? 遺体から首だけ切り取って保管しているのだろうか?
ボクはもと来た道を辿りながら、そんな考えを巡らせていた。
道なき道をかき分けながら、やっとクルマへ戻ってきた。
が、そこですぐに異変に気が付いた。母がいないのである。何ということだ・・・。
「母さーん!!」ボクはしばらく叫びながら辺りを探してみた。返事はない。焦り始める。
携帯もかけてみたが、なんと携帯の入ったバッグごと車に置かれていた。
クルマを降りてあちこち探してみると、左の方に歩いてなら下っていける坂道があることに気が付いた。母もここを行った可能性はある。ボクも坂道を下ることにした。
kamaです。今回もお読みいただきありがとうございます。実は、これを書いている最中に首にものすごい痛みが出るようになり、10日の日は会社を休んで形成外科へ行きレントゲンを撮ってもらいました。骨に異常はなく、原因不明。とりあえず薬をもらってきたのですが、もう本当にひどい痛みで、頭が首から落ちてしまうのではないかという痛みで、寝返りを打つときは両手で頭を押さえながらしていました。医院でもらった薬が効いたのか、その後は回復してきて、やっとこのお話を書き終えることができました。なので予定より2~3日余分に時間がかかってしまいました。
・・・まぁ、霊障じゃないと思います(笑)薬で治りましたからね。
もし、読者のみなさんにも首が痛くなった人が出てきたら・・・その時はタイトルに【霊障注意】って入れます! よろしくお願いします。
凄く読み応えがあるお話でした
↑kamaです。コメントありがとうございます。楽しんでいただけたでしょうか。首は痛くなってませんか??
亡くなった人の首をホルマリン漬けって、奇妙な風習ですね。ちなみに読んだ後、首の痛みは出なかったがヘルニア持ちです。
↑kamaです。コメントありがとうございます。お体、お気を付けください。
読んだ翌日、朝目覚めたら全く右腕があがりません。とりあえず湿布で様子をみて良くならないようなら病院へいこうと思います。年のせいかも。
↑kamaです。コメントありがとうございます。その後右腕はいかがですか? シップならロキソニンテープよりケトプロフェンテープの方が効きますよ!! 他に身体の調子が悪くなった方はいませんか~?? みんな集まれー!! もはやこのコメント欄がサナトリウムだ!!
あっ、そうそう・・・この話に出てくる生首のホルマリン漬けですが・・・主人公も言っているようにホルマリンではなさそうですよね。どっちかというと、ハーブ酒に近いような・・・
rarkです。とても面白かったし、とても参考になりました!!
↑kamaです。rark様!??ひょえ~~コメントありがとうございます!もったいなきお言葉。でもボクなんかまだまだですよ。みなさんのお話を読んですげーなーと思うことが多いです。奇々怪々さんは自由に書かせてくれるところなので安心してもう100話も書いちゃいましたが、まだまだ言葉足らずや逆に言葉が多すぎる部分もあったりで日々いろいろ考えながら書いてます。rark様の作品ももちろん読ませていただいております~~。ありがとうございます。
kamaです。どうやら韓国語のYoutubeチャンネルで朗読されたみたいです。ありがたやありがたや。何言ってるかはわからなかったですが、とても贅沢な作りで感激しました。
何か凄く韓国っぽいな〜とは思ってた
↑kamaです。コメントありがとうございます。ナルホド、これは目からウロコです。そうやって見ると物語全体がなにか怪しげな雰囲気をまとってより楽しめそうですね。お話の中ではあえて地名は出していないし、変に特定されると困るのでフェリーの時間も適当にして、方言もいろいろ混ぜてやってるのですが、なるほど~韓国かぁ~。こりゃー韓国を舞台に1本書いてもおもしろいかもしれないですね。
とても読みやすく読み応えのあるお話でした。
↑kamaです。コメントありがとうございます。もう今までさんざん読みにくいだの話が長いだといろいろ言われてきましたので、読みやすいなんて言われるととてもうれしいです。ありがとうございます。これからももっと精進いたします。
すごく不気味で読み応えがある名作でした
↑kamaです。コメントありがとうございます。お褒め頂き大変感謝しております。
次回作・・・いや、次々回くらいかな~・・・もっと怖いの出します。お楽しみに。
夢にまで、でてきそうな怖いのお願いします。
とても面白い内容でした
読み終わったらちょと首が痛くなってきました。どうすればいいですか?教てくださいKama
さん
五郎って方は女性の人ですか?クビは痛くありませんが…読み終えたアトなんとなくそう思えました。
最後のサナトリウムと周辺の集落跡地の火災は、お兄さんが、火を放ったということなのでしょうか??
とても読み応えのある話でした。
↑そこは描かれていませんから、想像するのが一番楽しいかもね。
もしかしたら、集落の謎の住人達と壮絶な戦いがあったあとでの火災かもしれないし、
お兄さんも死んだのかもしれないし、生きてるかもしれないし、
集落の人間たちはそもそも日本人としてカウントされていない人間なんじゃないのか、とか
いろいろ想像が膨らみます。
実は、集落の人々はサンカだった説