山あいのラブホでの一夜
投稿者:ねこじろう (149)
殺風景な白壁の中央には安っぽいドア。
ドアには【オールタイム2,000円】と書かれたボードが貼られていた。
その上には「空室」の文字が青白く光っている。
Sはドアノブを握ると、回してみる。
するとそれは容易に回転しあっさり開いた。
同時に室内に明かりがパッと灯る。
見ると玄関上がってすぐ目の前にドアがあった。
Sは靴を脱いで上がりそのドアを開く。
途端に何故か焦げ臭い匂いが鼻をついた。
室内は8帖ほどあるようだ。
そこはまるで昭和の頃のピンク映画に出てくるような安っぽいラブホテル一室の眺め。
天井からはシャンデリア調の照明がぶら下がっていて、淡い暖色系の明かりを灯している。
毛足の長いワインカラーのカーペットに安っぽいベージュのクロス。
片隅には時代錯誤な箱型テレビと小さな冷蔵庫があり、奥にはダブルベッドが一つある。
ベッドの真上の天井は鏡張りで、際は全面ガラスになっていて奥の浴室が丸見えのようだ。
二人が入口で立ち尽くしていると、
ドン、、、ドン、、、
玄関ドアを叩く音がする。
驚いたSとN美は顔を見合わせると、同時に振り返った。
緊張した面持ちでSが「はい」と声を出す。
するとドア向こうから「お泊まりですか?」というくぐもった男の声がする。
Sがドアに向かい「は、、はい」と答えると、下方にある小窓がパカリと開く。
血走った2つの瞳が隙間から覗いている。
瞳はしばらくSらを凝視すると、「2,000円です」と呟いた。
彼はドアのところまで歩きジーパンの尻ポケットから財布を出すと、1,000円札を2枚抜き取り隙間に差し出す。
しばらくすると筋張った指がぬっと現れ、奪うようにして取り去った。
Sはすぐドアに鍵をかけると、さらにチェーンまで掛けた。
※※※※※※※※※※
「ちょっと、シャワー浴びてくる」
そう言って、N美は奥の浴室へと行った。
ねこじろうさんの作品は本当に引き込まれるし、いつも楽しみにしてます。
ありがとうございます。
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彼女は、とりつかれてしまったのか((( ;゚Д゚)))