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ねこじろうさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

夏の夜の悪夢─ベランダに現れる女
長編 2023/08/14 15:51 8,357view
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眞鍋はしばらく考えていたが、めんどくさくなったのか立ち上がり、バイトの準備を始めた。
※※※※※※※※※※

それから一週間が過ぎた、夏休みも中盤に差し掛かった頃のこと。

眞鍋と小林は同級生の女友達2人と、4人で連れだって海に遊びに行った。

楽しいひとときはあっという間に過ぎ、2人アパートに帰ったのは午後9時頃。

リビングのソファーで二人その日の楽しかったこととかをビールを飲みながら談笑していると「ちょっと風にでも当たってくるわ」と言って眞鍋が立ち上がり、ベランダに出る。

するとすぐに彼の声がした。

「おい、ちょっと!」

「何だよ?」と言いながら小林も立ち上がりベランダへと歩くと、手すりのところに立つ眞鍋の隣に並んだ。

そして眞鍋の指差す先に視線をやった後、「え?」と声をだした。

そこはあのベランダ。

入口サッシ扉から漏れる淡い光に照らされている。

以前は2個だった片隅の黒いゴミ袋が4個になっていた。

「なあ、あれからゴミ出しの日、何度かあったよな」
眞鍋の呟きに小林はコクりと頷く。

そして彼が何かを言おうとした時だ。

あのベランダのサッシ扉が突然開くと、中から人が現れた。

それはTシャツにジーパンという格好をした細身の若い男。

男は手すりの上に両手を乗せると、ただボンヤリと外を眺めている。

以前に現れたスーツ姿をした初老の男と同じような、放心したような顔で。

しばらくするとその若い男は後ろを向くとフラフラと歩きながら、ベランダから消えた。

眞鍋が険しい顔で口を開く。

「この間はスーツ姿のおっさん、今度は若い兄ちゃん。
いったいあの女は何者なんだ?」

小林は答えることなく、ただじっとあのベランダを眺めていた。
※※※※※※※※※※

翌日眞鍋は朝からバイトで小林はバイトが休みで1日フリーだったから、午前中は部屋でゴロゴロしていた。

午後からは昼御飯を近くのコンビニででも買おうと、彼はアパートを出る。

レジ袋を提げてアパートの敷地に戻った時、冷たい滴が彼の首筋を濡らした。

驚いて空を見上げると、いつの間にか墨汁をこぼしたようになっていて辺りも薄暗い。

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