夏の夜の悪夢─ベランダに現れる女
投稿者:ねこじろう (147)
眞鍋はしばらく考えていたが、めんどくさくなったのか立ち上がり、バイトの準備を始めた。
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それから一週間が過ぎた、夏休みも中盤に差し掛かった頃のこと。
眞鍋と小林は同級生の女友達2人と、4人で連れだって海に遊びに行った。
楽しいひとときはあっという間に過ぎ、2人アパートに帰ったのは午後9時頃。
リビングのソファーで二人その日の楽しかったこととかをビールを飲みながら談笑していると「ちょっと風にでも当たってくるわ」と言って眞鍋が立ち上がり、ベランダに出る。
するとすぐに彼の声がした。
「おい、ちょっと!」
「何だよ?」と言いながら小林も立ち上がりベランダへと歩くと、手すりのところに立つ眞鍋の隣に並んだ。
そして眞鍋の指差す先に視線をやった後、「え?」と声をだした。
そこはあのベランダ。
入口サッシ扉から漏れる淡い光に照らされている。
以前は2個だった片隅の黒いゴミ袋が4個になっていた。
「なあ、あれからゴミ出しの日、何度かあったよな」
眞鍋の呟きに小林はコクりと頷く。
そして彼が何かを言おうとした時だ。
あのベランダのサッシ扉が突然開くと、中から人が現れた。
それはTシャツにジーパンという格好をした細身の若い男。
男は手すりの上に両手を乗せると、ただボンヤリと外を眺めている。
以前に現れたスーツ姿をした初老の男と同じような、放心したような顔で。
しばらくするとその若い男は後ろを向くとフラフラと歩きながら、ベランダから消えた。
眞鍋が険しい顔で口を開く。
「この間はスーツ姿のおっさん、今度は若い兄ちゃん。
いったいあの女は何者なんだ?」
小林は答えることなく、ただじっとあのベランダを眺めていた。
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翌日眞鍋は朝からバイトで小林はバイトが休みで1日フリーだったから、午前中は部屋でゴロゴロしていた。
午後からは昼御飯を近くのコンビニででも買おうと、彼はアパートを出る。
レジ袋を提げてアパートの敷地に戻った時、冷たい滴が彼の首筋を濡らした。
驚いて空を見上げると、いつの間にか墨汁をこぼしたようになっていて辺りも薄暗い。
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