奇々怪々 お知らせ

不思議体験

harutonさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

追いかけてくる※※
長編 2023/07/06 01:36 14,011view
0

って大声を出しながらリビングまで走っていった。恐る恐る掃き出し窓をみてみるとね、いたんだよ。
黒い蜂が。

なんで。なんで。

もう逃げるしかない。
Tは危機を感じた。かと言って、辺りは暗くなっていたから外に出て逃げるのはよくない、とTは子どもながらに思ったんだ。しかもここら辺は閑散としていて、一体どこに向かって逃げればいいのか、Tには分からなかった。

Tはトイレに立てこもることにした。
しっかりとドアの鍵を閉めて、あの羽音が聞こえないように耳をふさいだ。
可哀想だね。妖怪の余も心が痛むよ。

何分か経つと、ドアの向こうから羽音が嫌でも耳に入ってきた。

ブーン。ブゥゥン。

Tは勘弁してくれって半べそをかいていた。でもこの蜂は不思議だよね。まるでTを追いかけているみたいだよね。
その時ーーガチャリと音がしたんだよ。

Tは思った。
もしかして母親が帰ってきたかもしれないってね。

でもあの黒い蜂がいると考えると、Tはなかなかドアを開けることが出来なかった。ようやっとTは意を決してドアを開けた。蜂は見当たらなかった。
きっとどこか部屋の隅に潜んでいるかもしれないと思うと、Tは気が気ではなかったんだ。Tが恐怖で立ち止まっていると、Tのお袋さんがやってきて、Tに何をしているのか尋ねた。

Tはお袋さんの顔をみて、やっと安心できたんだろうーー事情をお袋さんに話したんだ。お袋さんは蜂を家中探した。
だけど、見つからなかったんだよ。
あんなにTを追いかけてきたくせに…。
あの忌まわしい羽音も聞こえなくなっていた。お袋さんはTに言ったんだ。あんた夢でもみていたんじゃないの、てね。

Tは呆然としたみたい。
ねえキミ。Tは白昼夢を見たと思うかい?

まあ虫除けの札が貼ってあったということは、虫がよく入る場所だったかもしれないよね。でもね、あれ以来蜂が侵入してくることはなかったんだ。

やっぱりTは幻でも見たのかもしれないね。
何年か経つとT達家族は別の地区に引っ越していった。

6/8
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。