廃墟実況ライブ
投稿者:ねこじろう (147)
そう言うと私はドアノブを握り力を込める。
するとそれはアッサリ回転し開いた。
中は人が一人入れるくらいのスペースで、急勾配の木製の階段が上方へと伸びている。
私は緊張した面持ちでディレクターの顔を見てうなずくと、おもむろに階段を登りだした。
2メートルほど登った辺りは天井だったが、頭上は人一人が通れるくらいに四角くくり貫かれていて、そこから頭一つ出してみる。
ひんやりした風が頬をくすぐった。
何故だか生臭い匂いが鼻をつく。
懐中電灯で辺りを照らしてみた。
そこはどうやら屋根裏のようで、光の輪っかは、複雑に絡み合う梁や土嚢、クモの巣などを断続的にとらえる。
屋根裏の天井までの高さは1・5メートルくらいだろうか、大人1人が何とか歩けるくらいだ。
そこはかなり広く、私はしばらく懐中電灯であちこち照らしていましたが、やがてアッと声を漏らした。
左手奥に木製の格子に仕切られたスペースがある。
『おい、座敷牢らしいのがあるぞ』
下を向くと、下から見上げるディレクターに声を掛けた。
それから私は天井裏に上がり、他の連中も一緒に上がる。
カメラマンはバッグから照明機材を取り出すと床面の適当な箇所に設置し、灯りを灯した。
屋根裏の片隅辺りの様子があからさまになる。
私は座敷牢らしき場所の仕切り前まで歩くと、正面のカメラマンに向かって喋り出した。
『私は今、幽霊が現れるという噂の日本家屋屋根裏にある座敷牢の前に立っております。
ここはかつて、ここの長男が閉じ込められていたところなんです』
座敷牢の入口ドアは開いていた。
カメラがそこから座敷牢の中を映す。
6帖ほどの板の間のようだ。
奥には小さな飾り窓が一つ。
真ん中辺りには丸いちゃぶ台が置かれ、周囲には箱形のテレビや茶箪笥、そして少し離れたところに畳まれた布団が積まれていた。
その側には用便用のおまるが置かれている。
目を引いたのが、板の間のあちこちに無造作に転がる小動物の死骸。
カメラがそれらをアップする。
それはウサギやいたちの死骸だった。
どれも腹や手足を無惨に引きちぎられ、生々しい臓物は露出している。
男が金鹿を殺したんだから、男が金鹿になるんじゃないの?
妹は急にどした。
その男が金鹿になり、妹は祟りで同種に変異したんやろ、、、
皆様、なかなかに鋭いところをつきますね。ラストの場面につきましては、それぞれで解釈していただければ?と思っております。─ねこじろう