廃墟実況ライブ
投稿者:ねこじろう (147)
『この家の長男はあんなものを喰いながら、ここに住んでいたんですかね?』
Hさんに尋ねると、彼は座敷牢の中を凝視しながら首を振り、『いや、あの死骸はまだ新しいから違うと思います』と答えた。
『じゃあ、あの死骸はいったい?』
再び尋ねたが、Hさんは俯きもう答えることはなかった。
そして奥にある飾り窓の方を指差すと、『あの窓です。あの窓の傍らに誰かが立っていたんです』と言う。
すると突然、
─ゴトリ、、、
私たちの立つところから離れた背後の暗闇の方から、物音がした。
一斉に全員の視線がそこに集中する。
素早く懐中電灯でその辺りを照らしてみた。
屋根裏奥の暗闇を光の輪っかが動く。
複雑に交差した床の梁、白い土嚢、錆び付いた農機具、、
様々な光景が次々照らされていく途中に一瞬、何か白っぽいものが見えた。
慌てて懐中電灯を元に戻す。
光の輪っかの下方床には腹部を引き裂かれたウサギの死骸がある。
そしてその上方天井辺りからは何だろう、銀色に光る長い何かが垂れ下がっておりポタポタと血が滴り落ちてきていた。
気のせいか、微かに人の荒い息遣いのようなのが聴こえてくる。
─何だろう?
恐る恐る電灯の頭を上へと向けた途端、
『ひっ!』
私は情けない悲鳴をあげながら、そのまま尻餅をついた。
一同は一瞬で凍りつく。
薄暗い天井に、異形の女がまるでヤモリのように張り付いている。
しかもその全身は金色の毛に被われており、長い白髪をだらりと下方に垂らし逆さまの青白い顔を私たちの方に向け、血走った両目でじっとこちらを睨んでいた。
彼女は両手で天井の梁を掴んだまま両足を天井から外すと、そのままゆっくりと床に降り立つ。
そして私たちの方に向き直ると、ニタリと不気味に微笑んだ。
その口元からは真っ赤な血が滴っている。
『うわっ』
カメラマンの悲鳴を皮切りに、一同はてんでバラバラに逃げ出し始めた。
我先にと階段を降り、ドタバタと薄暗い廊下を躓きながらも必死に走った。
男が金鹿を殺したんだから、男が金鹿になるんじゃないの?
妹は急にどした。
その男が金鹿になり、妹は祟りで同種に変異したんやろ、、、
皆様、なかなかに鋭いところをつきますね。ラストの場面につきましては、それぞれで解釈していただければ?と思っております。─ねこじろう