夢と現実の狭間に漂う狂気(加筆訂正版)
投稿者:ねこじろう (147)
その下の洒落た丸テーブルには、仲良さげな家族三人のスナップ写真が飾ってある。
いつもの寝室の光景だ。
─まだ、動悸がしているわ……
また恐ろしい夢……
ここのところ、こんな夢ばかり……
わたし、どうかしてるのかしら……
そう思いながら彼女はふと横を見る。
─夫がいない!
慌てて時計を見た。
8時!
―いけない!朝ごはん作らないと!
信子は急いでガウンを羽織り、スリッパをはいて寝室を出た。
奥の居間に行くまでに一人娘の部屋のドアを強くノックする。
「起きなさい!遅刻するわよ!」
居間のドアを開けたら、いつもの朝のニュースキャスターの元気な声が聞こえ、食卓テーブルの前には、既にワイシャツとネクタイ姿の夫と制服姿の娘が並び座っていた。
サッシ窓のレースカーテンから目映い朝の陽光が二人に当たっている。
「あらあら、ごめんなさい!
わたしが最後だったみたいね!
すぐご飯準備するから、ちょっと待ってちょうだいね。
本当わたしったら最近寝坊ばっかりして、変な夢は見るし……」
と一人ブツブツ言いながらバタバタと皿を準備し、冷蔵庫を開けて食材を出す。
そしてフライパンをガスレンジの上に置いた。
「目玉焼きとパンでいいでしょう?
それくらいしかできないわよ!」
信子は食卓の二人に聞く。
だが返事はない。
「まったく、何か返事くらいしなさいよ…」
信子の夫は口をポカンと開けてイスにもたれ掛かりダラリと両手を垂らして焦点の合わない目で天井を見上げている。
隣の娘はテーブルの上に横向きに頭を乗せ、両手は体の横にぶらんと下げている。
その両目は黒目が上を向いていた。
面白かったです