青い顔の看護師
投稿者:ねこじろう (147)
それから権藤は喋り疲れたのか大きくため息をつくと、天井を眺めながら再びベッドに仰向けになった。
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弘瀬がみぞおち辺りに鈍い痛みを感じだしたのは、今年の始めだった。
その後血便や吐き気とかがたまにあり、2月にあった会社の集団健診では「要精密検査」の判定を受け、渋々行った国立病院の診断結果は進行の進んだ大腸ガンということで、即手術、入院ということになったのだ。
一週間前に受けた手術の後は、病院敷地内の病棟四階の二人部屋に入院している。
同室の権藤は今年還暦になる男で、ステージ3の肝臓ガンらしく去年の春くらいから入院している。
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翌日のこと。
その日権藤は精密検査ということで、朝から看護師に担架に乗せられて病室から連れていかれた。
弘瀬は朝食を終えた後、読みかけの文庫本を読みはじめる。
だが昨日の権藤の話が気になり、あまり文章に集中出来ずにいた。
昼前くらいに戻ってきた権藤だったが、どうも様子がおかしい。
ベッドに横たわった後も酷く怯えている感じだ。
「ああ、わしもうダメやあ、もう死ぬんやあ!」
叫びながらバタつく権藤を、看護師が懸命に宥めていた。
「権藤さん、落ち着いてください。
いったいどうしたというんですか?」
看護師の顔を血走った目で睨みながら権藤が続ける。
「さっき担架で廊下を運ばれとった時、わし見たんやあの看護師を。あんたの後ろの方の廊下に立っとってな、薄気味悪い青い顔でわしの方を見とった。
だから、わし、もうダメや、いよいよお迎えが来るんや」
「青い顔の看護師?
誰なんですか、それは?
そんな人なんかいなかったですよ」
「おった、おったんや!あんたの後ろに、、
だからわし、もう死ぬ、死ぬんやああ!」
一向に様子が収まらない権藤に、とうとう看護師は安定剤を注射した。
しばらくすると権藤はおとなしくなり終いには眠りに落ちた。
看護師らはホッと一息つくと、担架を押しながら病室を後にした。
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その夜のこと。
夢にでてきそうです。怖かった!
怖がっていただけて良かったです
─ねこじろうより