青い顔の看護師
投稿者:ねこじろう (147)
「どうやらおかしな看護師が見えるようになったら、その患者さんというのはお迎えが間近みたいなんや」
正面のベッドに横たわり半身を起こした初老の権藤が、したり顔で言った。
白髪交じりの頭に痩せこけた顔。
病院着からはだけた胸はあばら骨が浮いている。
「おかしな看護師?
何なんですか?」
今年三十路を迎える弘瀬もベッドで半身を起こしたまま、権藤に尋ねた。
「この四階フロアーの病室は全部、厄介な病気に冒された人間が放り込まれるところというのは知っとるやろ。
つまりあんたもわしも同じ穴の狢というわけや。
そしてこのフロアー全室二人部屋なんやけどな、現在隣は空き部屋になっとるんや。
というのはな前月と前前月の末に立て続けに、二人亡くなられてな」
「え!」
意外な事実を聞かされ弘瀬は思わず声を出した。
権藤が続ける。
「わし隣部屋の二人とは結構仲良しやったんやけどな、以前から別の機会に各々からおかしな看護師のことを聞かされとったんや。
二人が言うてたのは、なんでもその看護師、最初のうちはチラチラと視界の端に入ってくる程度みたいなんやけど、終いには深夜に病室に入ってきてベッドの傍らに立ってな、その気色の悪い青い顔いっぱいに満面の笑みを浮かべながらじっと顔を覗き込むそうなんや。
そしてその笑みを見た言うてた辺りから不思議なことに二人は容態が急変して、数日で亡くなってしもうた」
「それ、本当ですか?」
と疑い深げな顔で弘瀬が言うと、権藤は神妙な顔でまた口を開く。
「ほんまや。
実はなわしも以前に、それらしき奴を見たことがあるんや」
「え!」
と驚く弘瀬の顔を見ながら権藤は真顔で頷くと、続けた。
「一週間くらい前やったかな。
その日わしなかなか寝付けなくてな、夜中にお茶でも飲もうと車椅子で部屋から出て休憩室まで行ったんや。
それで薄暗い休憩室の長机の前で1人お茶を飲んどって何気に前方の廊下の方に視線を移した時、ドキリとした。
暗い廊下の隅っこ辺りにポツンと誰か立っとるんや。
それで目を細めて改めて見た途端、パッと背中が粟立った。
白い制服姿の青い顔した看護師が立って、じっとこっちを見とんのや。
もうわし怖くて怖くて、慌てて部屋に戻ったわ」
夢にでてきそうです。怖かった!
怖がっていただけて良かったです
─ねこじろうより