取り憑かれた電車運転士
投稿者:ねこじろう (147)
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結局俺は一睡も出来ずに、深夜駅舎を出る。
裏手の駐車場にあるマイカーまで歩くと運転席に座り大きくため息を付く。
それからおもむろにエンジンをかけ、ライトをつけた時だ。
一瞬だがフロントガラス向こうの闇に、女のぐちゃぐちゃに変形した顔が浮かんでいるのが見えた。
「ひっ!」
俺は恐怖に耐えられず下を向く。
両膝がガタガタ震えている。
それからしばらくして恐る恐る顔を上げた時には、いつの間にか女の顔は消えていた。
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それからだ。
日常のちょっとした瞬間に、あの女が現れるようになるのは。
例えば駅の仮眠室で寝ていると、暗い天井にあの女の顔が浮かんでいるのが見える。
そしてまたアパートに帰り、朝干した洗濯物を取り込もうとサッシ窓のカーテンをサッと開いた瞬間、窓の向こうにあの女の白い顔だけが浮かんでおり、思わず目を反らし、また見直した時にはいなくなっている。
終いには電車を運転中のふとした時、正面の窓に女の顔が現れるようになった。
そうあの時と同じグシャグシャに潰れた顔に怯えた目で。
女の姿が現れるのは減るどころか、むしろ頻繁になってきていた。
─このままでは大きな事故を起こしてしまう。
痛感した俺は、とうとう【依願退職】という苦渋の決断をしたのだ。
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だが会社を辞めたからといって、なにも問題は解決しなかった。
女は自宅室内の至るところに姿を見せだしたのだ。
あるいは朝洗顔をした後顔を上げた時、姿見に。
あるいは閉めきったカーテンの隙間から。
あるいは浴室磨りガラスの向こうに。
またあるいは電源を落とした暗いテレビ画面にまで。
そして今も、、、
ガタッ、、、ガタッ
相変わらずサッシ窓から音がする。
再び視線をやり、背筋が凍った。
とても、とても怖かった!
精神的に追い詰められると全てを終わらせてしまうにでしょうか。
⬆️
⬆️怖がっていただき、光栄です。
⬆️そうですね。
それくらい、主は追い詰められていたのでしょう。
以上、ねこじろうより
でも自ら電車に飛び込んだ挙げ句に運転士につきまとうのが許さない。
⬆️なるほど、確かに理不尽ですね
─ねこじろうより
最初のワンピースの女性も、そういうのに憑かれて耐えきれず、、、そして負の連鎖って雰囲気を感じました。不条理怨念系好きです!