取り憑かれた電車運転士
投稿者:ねこじろう (147)
─18時5分。
全く問題ない、全てが予定通りだ。
一息つき再び窓に目をやると、前方にM駅ホームの様子が見えてきた。
人影は疎らのようだ。
ふとホーム先頭を見ると、白っぽいワンピースを着た女が白線辺りにポツンと立っているのが見える。
─あの女の人、危ないな、、、
と思いながら、いよいよ駅ホーム右脇に突入しかけたその時だった。
女はふらりと前に歩を進めると、一気に線路へと飛び込んだ。
「うわ!」
思わず声を出し、慌てて緊急ブレーキを掛けたがダメだった。
ドン!
女の体が目の前の窓に正面からぶつかる。
軽い地響きを足元に感じた時、一瞬だったが俺は見た。
窓にぶつかった衝撃で顔のひしゃげた女の怯えた目を。
時間にしたら僅かなものだった。
次の瞬間女の頭部は胴体から離れ、あっという間に闇に消えていく。
あとは、
黒板を引っ掻いたような不快なブレーキ音が止まるまで、俺は正面の窓にこびりついた数本の黒い髪の毛と血痕を眺めながら、ただ呆然と立ち尽くしていた。
※※※※※※※※※※
その日全ての事後処理を終えた時は、深夜零時になろうかとしていた。
あまりの精神的肉体的疲労のためすぐには帰宅せず、駅の仮眠室で少し横になろうと思った。
4帖ほどの殺風景な部屋の窓際にあるお粗末なパイプベッドに横たわり、静かに目を閉じる。
即寝落ちすると思ったが、何故だろうちっとも眠れない。
暗い天井を見ていると、やがて頭の中に恐ろしい思念と光景が湧いてきた。
─電車の窓にぶつかった瞬間の女のひしゃげた顔と怯えた目、、
女は確かに俺の顔を見た。
あの瞬間、彼女はいったい何を思ったのだろう?
怒り?悲しみ?後悔?それとも?
いずれにしろ間違いなく言えるのは、あの女がこの世で最後に見たのは、子供でも旦那でも彼氏でもなく、
この俺だということ。
とても、とても怖かった!
精神的に追い詰められると全てを終わらせてしまうにでしょうか。
⬆️
⬆️怖がっていただき、光栄です。
⬆️そうですね。
それくらい、主は追い詰められていたのでしょう。
以上、ねこじろうより
でも自ら電車に飛び込んだ挙げ句に運転士につきまとうのが許さない。
⬆️なるほど、確かに理不尽ですね
─ねこじろうより
最初のワンピースの女性も、そういうのに憑かれて耐えきれず、、、そして負の連鎖って雰囲気を感じました。不条理怨念系好きです!