【白鳥凉子】というマッチングアプリの女
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2023/05/18
18:35
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と上條は何気に隣を見る。
だがそこには白鳥の姿がない。
慌てて彼は立ち止まると、辺りを見回した。
すると10メートルほど後方にある電信柱の脇に、彼女がうつむきながら立っているのが視界に入る。
不審に思った上條が「どうしたの?」と笑いながら歩き近づく。
下方から白鳥の顔を覗き込む上條に対し、彼女はうつむいたまま、何やら同じ言葉をブツブツと繰り返していた。
「アンタニハワタサナイ、、ゼッタイニ、、アンタニハワタサナイ、、ゼッタイニ、、」
意味不明な言葉に首を傾げる上條を前にして、彼女は突然天を仰ぐと叫んだ。
「あなた何言ってんの?
彼は私のものだから!」
彼女はバッグから包丁を出し両手に持つと「ここにいるんでしょ?」と言っていきなり腹部を刺した。
白いドレスの真ん中部分はあっという間に血に染まり、辺りは騒然となる。
必死に止める上條をよそに、彼女は何かに憑かれたかのように「ここ?ここ?ここなの?」と叫びながらひたすら腹部や胸部を刺し続けた。
その黒目は互いに反対側を睨み、口からは白い泡が垂れている。
足元のアスファルトにはいつの間にか血だまりが出来ていた。
そしてやがて彼女は包丁を落とすと、彼の腕の中でぐったりとなった。
「凉子~!、おい凉子~!しっかりしろ!」
多くの野次馬に囲まれ白鳥を抱き抱える上條の泣き叫ぶ声が、梅雨入り前の陰鬱な空にむなしく吸い込まれていった。
【了】
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演じるって疲れますよね。
そうですね、演じる対象と演者の見た目や中身がかけ離れればかけ離れるだけ、演者はくたびれるものでしょうね。
─ねこじろう
1回、三井のリハウス、しとこか。
⬆️🤣🤣🤣
そういえば、そうですね
─ねこじろうより
なぜか、エースを狙えと言うアニメを思い出した。
黒烏夏男です