旧道M峠沿いのドライブイン【やすらぎ】
投稿者:ねこじろう (149)
長編
2023/04/05
17:33
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とうとう胸元まで沈んだ状態になり、俺は叫びながら必死に手足を動かす。
だが無慈悲にもその黒いうねりは、客たちを、俺を、そして最後は店内の全てを飲み込んでいった。
た、助けて、、、
視界を失われ胸をかきむしるような息苦しさはいつまでも続き、俺はいつの間にか意識を失った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
…………
狂ったように鳴くセミの声が聞こてくる。
気が付いた時に俺は、西からの朱色の陽光を浴びながらだだっ広い土地に一人倒れていた。
口内にあるジャリジャリとした気持ちの悪い異物感で思わず吐き出すと、一塊の泥だった。
ひどい頭痛と吐き気に耐えながら
何とかゆっくりと立ち上がる。
革ジャンが泥だらけだ。
パンパンと汚れを払い、辺りを見回してみる。
彼方には連なる山々が見え、その狭間からは鮮やかなオレンジ色の太陽が覗いていた。
ふと正面を見ると、砂利の敷き詰められた土地の真ん中辺りにポツンと、愛車のバイクが横倒れになっていた。
ふらつきながらもその近くまで行くと、傍らに大きな安っぽい電飾看板の残骸が横たわっている。
そこには縦書きで【ドライブインやすらぎ】の文字が並んでいるのが、辛うじて分かった。
【了】
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不思議な体験でしたね。
残留思念みたいなものが白昼夢を見せたのでしょうか
残留思念、、、面白い考えですね
fromねこじろう
二番目のコメントの人が指摘した通りが近いと思う。