ひとりあそび【ジロウくん】
投稿者:ねこじろう (147)
莉菜が興奮しながら河原を走る。
私はブルーシートを敷いて横座りすると、あらかじめ準備していた缶コーラの蓋を開けた。
見上げると雲一つない秋晴れが広がっている。
川のせせらぎが耳に心地好い。
水はとても澄んでいて肉眼でもはっきり川底が見えそうだ。
ふと後方に視線をやると、大きな岩を背にしてブリキの立看板が設置されているのに気づいた。
かなり錆び付いていて年月の経過を感じさせる。
看板には黒い文字で何か書かれているようで、気になった私は立ち上がり、そこまで歩いてみる。
看板には、次のように書かれていた。
※※※※※※※※※※
男の子を探しています!
平成○年8月8日午後未明。
夏休みに家族とともにキャンプに来ていた立花二郎君(8歳)が、この河原付近で消息不明となりました。
身長は1メートルくらいで中肉中背。野球と釣りの好きな明るい少年です。
何か情報をお持ちの方おられましたら、ご一報ください。
なお当時の風体は以下の写真のとおりです。
※※※※※※※※※※
看板下方には、白いTシャツに紺の半ズボン姿の瞳の大きな男の子の写真が貼ってある。
その下には、連絡先の携帯番号が記されていた。
─二郎といえば、最近莉菜が遊んでいる想像の友達と同じ名前だ。
8歳といったら莉菜の一つ上。
ご両親の心痛は半端ないだろうなあ。
等と思いながら私はまた元の場所に戻ると、ブルーシートの上に座った。
莉菜はしばらくの間川辺から川に石を投げていたのだが、しばらくすると動かずにじっと対岸の方を見だした。
その表情があまりに真剣なので、
「莉菜ちゃん、どうしたの?何かいるの?」
と声を掛けてみた。
すると人差し指を口元で縦にして、
「しっ!静かにして!今、ジロウくんが釣りしてるんだから」
と嬉しそうに微笑んだ、、、
子供の無邪気な心はやっぱりすごい…