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ヒトコワ

Nさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

ホームレスから盗んだガラケー
長編 2023/03/06 18:15 61,759view
8

メモを終えたおじさんはスマホを俺に返却すると、「兄ちゃん、もう人の物を盗んだらあかんで?どうなるか分かったやろ?」と再び俺の目の前に屈んで喋る。

俺は「は、はい。本当にすみませんでした…」とすっかり意気消沈して目も合わせられないほどだった。

これでおじさんは帰ってくれるだろうかと思った直後、おじさんは突然俺の髪を掴んで引き寄せた。
「いたッ」と声を上げる間も無いくらい素早く引き寄せられると、もうキスするくらいの距離におじさんの濃い顔があった。

「ええか、兄ちゃん。ワシのケータイの中身の事は忘れえ。もしワシのところに警察が来てもワシはもう出所した後じゃけ罪は償っとるんじゃ。じゃけえ、すぐ出てくるど。そんなら報復に兄ちゃんや兄ちゃんの友達に何するか分からんけえの。のう?分かってくれるか?」

マジでちょっとちびった。
チョロッとちびりながら俺は髪を掴まれたまま頭を縦にカクカクと小刻みに震わせて精一杯頷いた。
何秒間とおじさんの鋭い眼光が俺を睨みつけてたけど、俺が涙目になって視界が滲むと、おじさんは百面相の如き早業で笑顔に戻り「分かってくれたらええんや。兄ちゃんもまだ若いけえの。でも、相手は選ばにゃあかんで?」と髪を放して、肩をポンポンと叩く。

おじさんの拘束から解放された俺は膝を付くように崩れると、おじさんは無言で俺の襟元や服装を綺麗に整える。

そして、仕上げと言わんばかりに両肩を軽く叩くと、「じゃあ、ワシは帰る。兄ちゃんも元気でな」とニカッと笑い、ズタズタと足音を立てながら部屋を出てった。
その時、おじさんがずっと靴を履いたまま部屋に上がってた事に始めて気付き、「あ、靴…」と空っぽな感想が漏れた。

こうして一人取り残された俺は、自分の部屋だと言うのに生きた心地がしないまましばらく放心状態でいた。

それ以降おじさんが接触してくることはなかった。
俺の友達にも遠回しに変わった事はなかったか聞いて回ってみたが何もないようだった。
結局、あのホームレスのおじさんのガラケーの中身がダウンロードしたものなのか、あのおじさん自身が撮影したものなのかは分からないままだが、おじさん自身が「出所した」とか「罪を償った」と言ってたから、たぶん、前科者なのかもしれない。

今回の件は俺の自業自得だが、マジで殺されるかと思った体験だ。

5/5
コメント(8)
  • kamaです。怖いですね!僕だったらスライディング土下座してます!

    2023/03/06/19:28
  • 色々ヤバすぎだろ

    2023/03/06/20:13
  • 絶対に他人の持ち物を盗んではいけない!マジでヤバい!

    2023/03/20/23:03
  • こえー
    ヒトコワは生々しくて嫌な読後感がありますね

    2023/05/01/03:05
  • どっちもどっちだね。

    2023/07/15/18:30
  • 怖かったー!!

    2023/08/06/15:31
  • 全力で逃げる20歳の若者を追跡できる、家を特定できる、鍵を開けれる、マッチョ
    そんなホームレスを人生で一度でいいから見てみたい

    2024/07/23/08:34
  • なんか主人公がちいかわみたいになってるの想像してしまった

    2024/11/06/21:41

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