紫色の光の中からヘドロのようなものがあふれ出し、ブクブクと泡を立てながら、人の形になっていった。やがてそれは、3メートル近い巨人となって二人の前に立ちはだかった。周囲には魑魅魍魎が飛び交い、瘴気がまき散らされている。怨念と結びついたダヴィデ神父の成れの果てである。
「・・・本国の命だと?・・・」
「えぇ、日本にあるこの教会の周囲に怨念が立ち込めているという噂は以前からありました。日本語を学んだ私が法王騎士団に入団したのを機に、追討令が具体化したというわけです」
「本国が我々に何をしてくれた。我らは見捨てられたのだ。教会にも、神にも・・・」
「あなたはもはや魔道を行くもの。神などと軽々しく口にするものではありません 」
「こざかしい。日本を滅ぼした次にはイタリアを滅っしてくれるわ」
ルーカ神父はソードの束の部分に十字架をはめ込み、ソード自体を十字架として念を込める。鋭い気合が衝撃となって走り、ダヴィデ神父の周りの悪霊と瘴気を一瞬の間に吹き飛ばす。
「・・・なかなかやるではないか、騎士殿よ」
ダヴィデは極悪な大剣を地面から取り出し、ルーカ神父めがけて叩きつける。
寸でのところで避ける。
「あなた、より子ちゃんのお父さんなんでしょ?天使のお父さんがそんな悪魔でいいと思ってるの?大人しくしてよ! 」朽屋だ。
「ちょこざいな、小娘。踏みつぶしてくれる・・・」
朽屋の方に巨体が向かってきた。さすがに朽屋の短槍では心もとない。
逃げるのが精一杯か・・・。
ダヴィデが大剣を一閃する。ものすごい圧が来る。
地面を転げまわりながら逃げる朽屋。
大剣が一本の樹木をなぎ倒す。
涼とより子がよく寄り添っていた木陰を提供していた木だ。
ダヴィデが再び大剣を大きく振りかぶる。
こんなものが当たれば朽屋の身体など一瞬に真っ二つにされるだろうが、朽屋はその俊敏な体術で二度三度とダヴィデの大剣を避けきる。そして間合いを取るように後方に跳ねた。
そこへ今度はルーカ神父の3頭のガーゴイルが空から牽制に入る。
ガーゴイルの持つソードではダヴィデの大剣を止めることはできない。
せいぜい目障りに飛んでダヴィデの視界を奪い、動きを邪魔するくらいだ。
だが、朽屋にはそれで充分だった。一瞬の隙を逃さず、ダヴィデの脇が開いたその瞬間に、短槍を心臓めがけて力いっぱい投擲した。
「ドッ!!」という鈍い音と共に、朽屋の短槍はダヴィデの心臓を貫き、
槍の穂先が背中に突き抜けた。
「神父様!」
ルーカ神父はすでに詠唱を終えていた。
ルーカ神父がソードでダヴィデを指すと雷鳴がとどろき、天からの雷撃が朽屋の投げた短槍めがけて落ちた。爆発的な衝撃がダヴィデの全身に走る。強い光と、一瞬の炎、煙、そして爆音が鳴り響く。ダヴィデの身体には大穴が空き、一部が吹き飛んでいった。

























kamaです。先ほど投稿させていただいた「より子ちゃん」の裏で起きていた一大事件を書かせていただきました。まず先に「より子ちゃん」を読まれてからこちらを読むと、面白さも倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で4作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズも読まれると世界観が広がると思います。
あと、今回27ページもの大長編となってしまいました。頑張って読んでくれた方、ありがとうございます。・・・これだと誰も怪談朗読してくれないだろうから、そのうち自分でやろうかな・・・と思ってます。
まるで吸い込まれるような感じで、最後まで拝読させて戴きました。続きを早く読みたいです。
↑kamaです。27ページもあるのに読んでいただき感謝です。
朽屋瑠子シリーズは今後、短編をいくつか出しつつ、たまに長編みたいな、そんな感じで出して行こうと思ってます。
kamaです。
涼君が押し入れの鉱石採集セットを見つけてより子ちゃんに再開するシーンに、
『ローズクウォーツが抜け落ちた鉱石採集セットのように、
涼の心にもぽっかりと隙間が空いているようだった。』
という一文を追加させてもらいました。
・・・詩的でしょ?
まさに、涼君の鉱石セットのくだりがホロリと来ました。短編物も拝読させて戴きましたが、瑠子シリーズはスリルがあっていつまでも読みたくなります。
↑kamaです。ありがとうございます。どこかホロリとくるシーンがあるのって、いいですよね。怪談は怖い話ばかりじゃないと思いますし。
奇々怪々に「怖いボタン」以外も欲しいです~。
また楽しみにしていてくださいね。
ボクはより子ちゃんが泥だらけになっても涼君を追いかけるとこでホロリと来ました。
より子ちゃん単独の話だけ見ていると、子供の誕生日になぜ教会から出られないより子ちゃんが家まで来たのかわからなかったけど、これでつながりました。
↑kamaです。ありがとうございます。朽屋瑠子シリーズは、ボクの作品の裏で起きてる解決編みたいな構成で、オムニバス的に楽しめるようにしてます。これからもよろしくお願いします。
今まで投稿話の中で27ページという最長の話を投稿されたkama先生お疲れ様です。ところで今回の話も場合によっては改稿などで短くなるでしょうか?
↑kamaです。ありがとうございます。改稿の可能性は無いとは言えませんが、今のところは「やり切った感」が強いので、あったとしてもたぶん1年後とか、あるいは改稿しないか・・・という感じです。そうですね・・・やるとしたら戦争の歴史を説明している部分をもう少しはしょるとか・・・ですかね。でもあの部分もより子ちゃん親子がいかにして生涯を閉じたかの部分なのでバックボーンとしては残しておきたい気もしますし。まぁとりあえず今は次の作品を出すことの方を優先したいと思ってます。ありがとうございます。
色々な方の長編作品を読んでいた際にkana様のクッチャルコシリーズを見つけ、初投稿から読ませていただいているのですがこの話で先に読んでいた作品と繋がってとてもテンション上がりました…!!
本当に楽しく読ませていただいてます!!ファンです!!!