二度救われた命
投稿者:ぴ (414)
父はその日のうちに帰る気まんまんでした。
だけど祖母があまりに必死な形相で帰るのを引き留めるので、しぶしぶ会社のほうに連絡して翌日の休みを取ったようでした。
私と兄はその日のうちに帰るつもりが、もう一泊できると聞いてすごく嬉しくなりました。
明日は祖母と朝早くに鶏のお世話をし、畑仕事を手伝って、それから昼間は山菜を取りに行ってとわくわくするような予定を立てました。
そして眠ろうと目を瞑ったけど、なぜか寝付けません。
一緒の部屋で寝ている父と母と兄はすっかり眠ってしまったけど、なんだか寝付けなくて一人でぼ~としていました。
そしたら突然私の耳に「シャラーン」という耳障りのいい音が聞こえてきたのです。
その音はすごく耳心地よく、私をうっとりさせてくれました。
その音に誘われるようにして、私は部屋の戸を開けました。
神秘的なその音はどうやら庭からしているようでした。
まるで誘い出されるようにして庭に出ると、再びシャラーンという音がして顔を上げると、そこに見事なほど真っ白な髪の毛の細身の女性が立っていました。
狐のお面を被って巫女装束のような着物を着ている女性でした。
その人がまるで私を誘うように手招いてきたのです。
まるで操られるみたいに頭がぼーっとしてきて、気づいたら狐のお面をかぶった女性に手を引かれていました。
そしてぐいぐいと手を引かれ、森の中を歩いていったのです。
不思議なことに森なのに、遠くからお祭りの音が聞こえてきました。
どんちゃんどんちゃんという軽快な太鼓の音がして、すごく楽しそうな親子の笑い声が聞こえてきます。
近くでお祭りでもしているのかと、私はきょろきょろしました。
でも音が聞こえるだけで、華やかな夜店などはどこにもありませんでした。
私は途中でなんだか怖くなってきました。
相手は家族でも顔みしりの相手でもなく、知らない女性なのです。
さらにお面を被って顔も見えない女性です。
その人に急に手を引かれて歩きだしたけど、真っ暗な森の中で私はどこに連れていかれるのだろうと不安になりました。
そして引き返そうと私が女性から身を放そうと拒んだら、その女性は急に怒りだしたのです。
手を引っ込めようとする私に狐のお面の女性はぎゅうぎゅう強く掴みました。
あまりに痛くて、手を握りつぶされるかと思うくらいの強さでした。
強引に連れてこられて、私は森の奥の大きな木の下まで連れていかれました。
そこはすごく静かで、ほの暗く、とても怖いと思いました。
大きな木をよく見たら、何か真っ赤な実のようなものが生っているのに気づきました。
そして私はその実を見てびっくりします。
真っ赤に燃え上がると災いが起きるのではなく、
災いがすでに起きていてその怪異から守ろうとして燃え上がってるのかな
お祭りの誘惑に負けたりして助からなかったケースが凶事として言い伝えられてるのかもね