【目的地】
投稿者:no54ヌューダ (1)
なーちゃんは半ばパニックだった。なーちゃんのパニックに当てられて、サキも焦りだす。私はそんな二人を見ていると、かえって冷静になってしまっていた。冷静に、恐ろしいことに気づいてしまっていた。
その声は、私の耳元で聞こえていた。なーちゃんにも聞こえているが、サキには聞こえていない。
なにかが、誰かが後ろにいる。
しかもその声は、ナビの声ではない。女性の声ですらなかった。機械的な声とは正反対、おどろおどろしい声色の、男性の声だった……。
運転中のサキに代わり、なーちゃんとせーの、で後ろを見る。
誰もいない。
いないけれど、本当にハッキリ聞こえたのだ。目的地、と。
私たちはその後、今日あった恐ろしい出来事を忘れるためにお酒を飲みまくり、お笑いDVDを夜通し見ていた。見ているうちに、無理やりだった笑いも次第に自然になっていった。……本当は今日、ホラー好きのサキが用意した特選DVDを見る予定だったけれども、そのことには誰も触れなかった。
ナビがなんかおかしくなっただけ。田舎のほうだったから、ナビの情報もあやふやだった。サキが入力を間違えていた。後部座席で聞こえた声は、怖い雰囲気が生み出した空耳。こんなのが聞こえてきたら怖いなって思えば、そりゃそれくらいの勘違いは起きる。
私たちは脳内でそう都合よく解釈し、その日はお酒の力を借りて眠った。
次の日。もちろん夜中に幽霊がやってきて……なんてことはなく、全員無事に起床することが出来た。
サキとなーちゃんが荷物をまとめている中に、余ったお菓子を持たせたり、まだ空けていないお酒などを配っていく。
こんなに持たせられたら重くて階段降りられないじゃん!なんて冗談を言いながら、見送りのために一緒にサキの車に向かっていった。
私たちは基本的に一人が運転席、残りの人は後部座席、という座り方をするタイプだった(なんだか助手席に座るのが気まずい?気恥ずかしかった)のだが、なーちゃんもさすがに今回は助手席に座っていた。
「じゃあね、りかちゃん。いろいろあったけど……楽しかったね」
なーちゃんが少し眠い目をこすりながら、窓から顔を出してお別れを言う。なーちゃんの向こうの運転席にいるサキも、眠たげに大あくびをしながら、
「うん、たーのしかったね~。また今度の休みとかみんなで遊ぼうね……ふわ~あ」
と言ってくれた。
「ちょっと、運転大丈夫?しっかりしてよねー」
「大丈夫、大丈夫。ふわ~~……」
バイバイ、と手を振って、窓が閉まり車が発進する。うちの庭は出入口が狭いので、ゆっくり、そろりそろりと、安全に前進させる必要があった。
だからこそ気づいてしまった。夜には気づかなかった、あることに。
この間の大雨で少し汚れてしまっていたサキの車。後部座席側のボディが、妙にところどころきれいになっている。
きれいになっているが、何というのか、水で流したりふきんで拭いたようなきれいさではなくて。こびりついた汚れが、爪や指で引っかかれてめくれたような。
そう、まさに手のひらをべたっと押し付けて、そのままぬーっと下へ引いていったような……。
いや違う、違うというか、まさにそうじゃないか。見たままだ、サキの車に手形が付いている!
あまりに想像もしなかったことで、頭の理解が追い付かなかったが、これは明らかに手形だった。
よく見ると、後部座席側のボディだけじゃない。窓にも横にも、ベタベタベタベタ、手形とひっかいたような跡がある。
私が、そのことを伝えようと、車にぶつからないよう慎重に、けれど駆け足で近寄ったその時だった。
キャー!!とサキの悲鳴と共に、キッ!と短い音を立て、サキの車が止まる。
「サキ!なーちゃん!」
こういうのが一番ありそうだから怖い
一人だったらパニックになって事故る。
そしたらs吐噶喇男の人が入ってきて…想像しただけで恐怖
誤字った外から男の人が
心配でしたらお祓いされたら気持ちが落ち着くと思います。