叔父にそっくりな甥っ子
投稿者:ぴ (414)
それをじぃっと見ていたら、甥っ子が突然「なあ、晴美ィ」と私の名を呼んだのです。
急に名前を呼びすてされて驚きました。
いつも甥っ子は私のことを「はるちゃん」と呼ぶのです。
なのに、その日はいきなり呼び捨てにされて、いつもの甥っ子とは違う大人びた顔を私に向けてきたのです。
そして甥っ子は「おまえ、昔俺がこれで遊んでやったこと覚えてるか」と私に尋ねてきました。
それを聞いて、すごく驚きました。
そのとき、甥っ子が遊んでいたのは積み木でした。
そして私の母が言っていたことを思い出したのです。
私は叔父の機嫌がいい日に一度だけ遊んでもらったことがあったと聞きました。
そしてそのときの遊び道具が積み木だったのです。
私はそれを思い出し、思わず甥っ子から後ずさりしてしまいました。
すると甥っ子は3歳とは思えないくらいニヒルな顔をして笑ったのです。
口の端をちょっと意地悪にあげるところが叔父にそっくりでした。
あまりにその仕草が今は亡き叔父に似すぎていて、私はぞっとしたのです。
何度も黙っていようと思いましたが、手の甲のあざにあの意味深な発言を思い出すと、自分の中だけに留めておけませんでした。
弟と二人だけのときに、私は弟に甥っ子が叔父に似ている話をしたのです。
てっきり笑い飛ばされて、「そんなわけない」と言われると思っていました。
弟は最初「やめてくれよー」と思ったとおりの反応はしたのですが、少し黙ったかと思うとおろおろした様子で「実は俺も最近おかしいと思ってた」と話し出したのです。
弟はチャラさはありますが、荒事などには縁がないタイプで、言葉遣いは悪くありません。
元々口が悪いわけでもないし、嫁から言われて汚い言葉なんて使わないようにしているらしいです。
なのに最近、どこで覚えたのか3歳とは思えないような言葉を平気で使うらしく、幼稚園で苦情が入ったくらいなんだと聞きました。
さらに親に反抗するような態度も見せ始めて、自分の子供とは思えないと言ったのです。
普段は優しくてポヤっとした子らしいのですが、急に雰囲気が変わることがあって弟の嫁も手を焼いていると聞きました。
親に反抗するし、物を投げたり壊したりするし、教えた覚えがない汚い言葉遣いをすることもあるそうです。
弟の嫁はテレビか何かで見て覚えたと思っているみたいなのが幸いなようでした。
しかし弟の嫁と違って私たちは叔父を知っています。
だからたまに叔父が乗り移ったようだと弟も思ったことがあるらしいのです。
「叔父さんの生まれ変わりじゃないよな?」と弟は聞きました。
私も「勘弁してよ」と口をひくひくさせて言いながら、もしかしたらそうかもしれない…と思ってしまったのです。
けれどそんな私たちの心配とは裏腹に、甥っ子はすくすく成長して小学生になりました。
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