奇妙な隣人
投稿者:ねこじろう (149)
ああ、ルミ、こんなになってしまって!
ルミ、ルミ~~!大丈夫か~~!しっかりしろ―!
…………
─おい、ちょっと待てよ!
お前何するんだよ、
止めろ、止めてくれ―!
その後もしばらく派手な物音がしていたが、やがて静かになった。
ただならぬ気配に私は立ち上がると玄関まで歩き、ドアを開いて廊下に出る。
そして隣の呼び鈴を何度か鳴らしドアを叩きながら、「廣瀬さーん!、廣瀬さ―ん!大丈夫ですか―!」と大声を出した。
返事がない。
ドアノブを握ってみると容易に動き、あっさりとドアは開いた。
玄関には男ものの革靴、女性もののパンプス、そしてスニーカーが並んでいる。
私は玄関口に立つと「廣瀬さ~ん!、廣瀬さ~ん!どうしたんですか~!大丈夫ですか~!」と叫ぶ。
やはり返事はない。
薄暗い廊下には割れた皿の破片らしきものがあちこち散らばっていて、突き当たりの居間のドアは開いていた。
意を決して
「廣瀬さん、上がりますよ」
と言って靴を脱ぎ、破片に気を付けながら暗い廊下を歩き進む。
そして室内の状況を見た途端、ゾクリと背筋が凍った。
室内中央辺りにあるダイニングテーブルを挟んで2人の人らしきものが座っている。
部屋の電気は消されているのだが、各人の前に太い蝋燭が立てられていて、火が灯されていた。
蝋燭の灯火のせいで、辺りは不気味な雰囲気を醸し出している。
「人らしきもの」と感じたのは、どうも様子がおかしいのだ。
動きが全くない。
恐る恐る近づいてみると、座っているのはやはり人ではなかった
裸のマネキン?
しかも各々の顔部分を覆うように透明のガムテープで紙が貼られていた。
一つは中年とおぼしき女性の顔、もう一つは若い女の子の顔写真のようだ。
どちらもただ普通の写真を拡大しただけみたいで粒子が荒く、どこか異様な印象だ。
さらに壁際にあるソファーに視線を移し、息を飲んだ。
ヒトコワの完璧な怖い話ですね。
怖いってより悲しい話だ。きっと自責の念に駈られて自らを憎んで憎んで殺してしまったんだよ。