奇妙な隣人
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2023/01/09
21:21
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ワイシャツにネクタイ姿の廣瀬さんが仰向けになって横たわっているのだが、自らの両手で首を掴んでぐったりとなっている。
顔色は完全に血の気を失っていて、天井を睨んだまま口から泡を吹き、だらりと舌を垂らしていた。
「ひ、ろ、せ、さん、、、」
語りかけながら恐る恐る額に触れてみたが、ひんやりと冷たくなっていた。
私はすぐに警察に電話をした。
数日後に訪ねてきた警察の人の話では、
亡くなっていた廣瀬さんは1ヶ月ほど前にアパートに引っ越してきたそうで、以前は郊外の一軒家で奥さんと一人娘とともに暮らしていたそうだ。
以前から長く鬱で精神を患い通院していた奥さんは、大学受験を控え心理的に不安定だった娘さんと度々口論になっていたようで、とうとう冬のある晩、いつもの口喧嘩から逆上した奥さんは娘さんを包丁でめった刺しし、同じ包丁で自らも命を断ったということだった。
2人の死後から廣瀬さんの精神は崩壊し、仕事を辞め、アパートに引っ越したらしい。
廣瀬さんの死因は首を絞められての窒息死ということなのだが、
「現場の状況から推測すると、信じられないことなんですが自らの両手で首を絞めての窒息死ということになるんですけどね、こんなことってあり得るんですかね?」と言って警察の人は眉をひそめて首を振っていた。
【了】
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ヒトコワの完璧な怖い話ですね。
怖いってより悲しい話だ。きっと自責の念に駈られて自らを憎んで憎んで殺してしまったんだよ。