見えるフリをするのは良くない
投稿者:take (96)
人けのない文化ホールの裏手でNは待っていました。
振袖ではなく、黒っぽいスーツを着て、髪は短くなっていましたが、顔立ちは確かにNでした。
私を見ても特に笑顔を見せることもなく、ちょっと目礼するだけです。
内心、やだなあと思いつつ、
「久しぶり、元気だった?」
と、なんとか笑顔を作って、彼女の前に立ちました。
「お久しぶり……ね、あの時のことだけど」
挨拶もそこそこに、Nは挑むような目つきで、硬質な声色で切り出します。
「あの時?」
「小学校の時よ、私のことインチキだって言ったよね、まだそう思ってる?」
「はあ?」
私が首を傾げると、
「私は本当に霊が見えるんだから! あれから私はしょっちゅう金縛りに遭うようにもなったし、周りには聞こえない声も聞こえるようになった、今日だって見えない手で背中を押されたりした、私は霊能力者なんだからね!」
と、大声ではないものの、冷たい声で言い放ったのです。
そのとき、あの黒い靄が彼女の首に巻き付いているのが一瞬だけ見えました。
(今のは気のせいか?)
立ち尽くしている私を見て、ゾッとするような笑みを浮かべると、
「私はあなたみたいなニセモノとは違うの」
そう言うと、背を向けて歩き出します。
「おい、待てよ」
思わず引き止めようとした時、Nは振り返りもせず、
「ヨケイナコトハイウナ」
と、彼女のものではない男か女かわからない嗄れた声で言うと、そのまま歩き去っていきました。
あれから、
しょっちゅう金縛りに遭うようにもなった?
周りには聞こえない声も聞こえるようになった?
今日だって見えない手で背中を押されたりした?
まさか……まだアレはNに憑いてるのか?
いったいなんの目的で?
そうだとしたらNはこれからどうなるんだ?
付いている霊を除霊してあげないと、大変なことになるのではと思い心配です。
おもろいやんw馬鹿が損する世界は素晴らしい