きっと井戸の空気や中の異臭を嗅いで気分を害していたのだろう。
かく言う俺も野営を始めるまではあの骨の山が脳裏を過って気分が悪かった。
それに、あの異臭が中々鼻から取れなくて吐き気を堪えるのに必死だった。
そう考えるとこの村に来てからあまり良い思い出が無いなと俺は内心卑屈になりながらも一人ランプの灯かりをぼんやりと見つめていた。
やがて八畳間の居間でBは寝袋に下半身を入れたまま居眠りを始め、Aは体調がまた悪くなったのか寝込むように寝袋の上に横になって寝息を立てていた。
俺はと言えば、先輩に今日の調査報告を送ってなかったと思い、半日ぶりにスマホを取り出した。
画面の端の電波状況を一瞥した後、確かに電波が通っている事に胸を撫でおろすが、俺も今日は精神的に疲れたので内容を搔い摘んで箇条書きして送る。
村は廃村だった事。
廃村に仙人みたいなおじさんが住んでいる事。
村の端にある小屋に井戸があり、中に骨が大量に遺棄されていた事。
先輩の反応がわりかし楽しみでもあったが、俺はランプをそのままにして寝袋に潜り、大きな欠伸をかいて目を閉じる。
それほど、今日一日で精神が磨り減って疲れたのだろうか。
明日は村の周囲に何か無いか散策してみるか……そう考えていると次第に瞼が下がっていく。
その矢先、何やら外から「ズリ、ズリ」という何かを引き摺る音が聞こえ、咄嗟に寝袋から上半身を起こした。
二人の寝息が聞こえる中、ランプを消し、すかさず壁際に擦り寄って息を殺す。
そして、カーテンの無い窓から外を覗き見れば、生憎の曇り空で月が隠れているせいか外の様子が全く見えないので、得体の知れない何かが近づいてきているかと思えば嫌な汗が噴き出した。
それでも音は確実にこっちへ近づいているので、俺は慌ててBの肩を揺すって起こす事にした。
俺「おい、B。起きろ」
B「んん……」
寝惚け眼で真っ暗な室内を見渡すBに「外に誰かいる」と小声で話せば、Bに緊迫感が伝わったのか、すぐに目を開いて「マジ?」と重い腰を上げ、アサシンさながらの忍び足で窓辺に近寄っていく。
外を確認しようと首を伸ばすBを余所に、俺は次にAを揺する。
俺「A、起きろ」
しかし、Aは「うううう」と何やら苦しそうに呻いているばかりで、起きる気配はなかった。
そんな時、突然玄関ドアが「ドンドン」と強く叩かれた。
続いて聞き慣れた男の声で「おーい!いるんだろ!」と呼び掛けられると、Bは逡巡する仕草を見せた後に「仙人?」と自信なさげにドアに向かって言った。
恐る恐る玄関を開けば、暗闇の中に白髪交じりの髭が浮いていた事からすぐに仙人だと判別できた。
仙人は凸凹に凹んだ鍋を持参して抱えており、俺とBを見るなり「食料の礼だ。喰え」と素っ気ない態度でBに押し付けてきたので、Bは「え、あ、どうもっす」と反応に困りながらも受け取った。
それから仙人は家の中の様子を一瞥すると、そこに居ないAの姿を探しているのか「一人どこ行った?」と訝しんだ。
それに関しては隠す意味も無いのだが、俺は何となく「疲れたみたいで先に寝ちゃいました」と答えると、仙人は軽く「ふん」と鼻息を立てて納得した素振りだった。
そして、特に会話も無いまま仙人は挨拶だけ済ませて自分の家に帰ろうとするのだが、Bは仙人を呼び止めてあろうことかあの井戸について訊ねてしまう。
Bが「あの井戸、仙人は中を見た事あります?」と率直に切り出したので、おいおい仙人が犯人だったらどうすんだと焦った俺は肝を冷やし、最悪この場で殺される事を覚悟した。
まあ、そんな事はあり得ないのだが、井戸での体験があれば仙人が殺人犯でもおかしくないと思っていた。
























すげえ
めっちゃ読み応えありました
こういうのもっと読みたい
これ最高
描写がすごい
これほん怖とかの実写で見てみたいな
想像で吐き気がやばかった。怖かった。
漢字で書いた方が読みやすい言葉と、ひらがなで書いた方が読みやすい言葉がある。って文学者が言ってた。
本当に理解しているエンジニアは説明の時に専門用語を使わない。それと似ている
読み応えあるしきちんと怖い
大学二年生で平成後期生まれって書いてるから飛び級でもしたのか?と思ったけど後半って書きたかったのかな?
俺も気になった
2023年1月に投稿で夏休みの話ってことは、どんなに若くても2022年夏に大学二年生=2003年(平成15年)生
平成後期生まれとは言わないわな
細かいかもだけど、こういうとこで1回気になると一気に没入感無くなるからもうちょい設定練っといてほしい
↑
わかる。設定に引っかかると萎えるよな
俺は「排他的であればあるほど研究意欲が沸き立つ」で「オカルト好き」なのに完全に他人任せで調査に関わらない先輩が気になった
翌日迎えに来れるなら別の重要な調査と被ったとかじゃないだろうし
語り手達に状況を再確認させる人物がストーリー的に必要だったのは分かるけどちょっと萎える
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おもしろかった。