道順は一つだけなのに
投稿者:ミューファ (9)
短編
2023/01/04
16:01
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小学生の頃の、ある朝の話です。
目を覚まし、1階のリビングへ下りると何やら祖父と祖母が言い争っておりました。
祖父「だから俺は知らんって言うてるやろ!何回もしつこいな!」
祖母「でも私は確かに見てん、あれはお父さんやった!」
話を聞いたところ、前日の夜に祖母が不思議な経験をしたそうです。
祖父と祖母は同じ寝室で寝ており、夜中に祖母は寝室を出てトイレに向かいました。
用を足してドアを開けたところ、祖父がトイレの前に立っていたそうです。
祖父の足音が全く聞こえなかったため、祖母は少し驚き「あぁ、お父さん。びっくりした」と話し、
祖父とすれ違った後に寝室に戻りましたが、そこで愕然としました。
さっきトイレの前ですれ違ったばかりの祖父が、何事もなかったかのように布団の中で眠っていたのです。
寝室からトイレまでの道順は一つだけで、寝室のドアを出て廊下を直進すればトイレ、という道順です。
祖母は慌ててトイレの前を見ましたが、その頃にはすでにトイレの前に祖父の姿はありませんでした。
……こうして、冒頭の祖父と祖母の言い争いに繋がります。
なぜあのようなことが起こったのか、未だに全くわかりません。
ただ、実家で夜中にトイレに行くたびに祖母のこの話を思い出すので、とても怖い気持ちになります。
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