アオヤギ君
投稿者:ミューファ (9)
私が小学校5年生の夏休みの話です。
その日は8月31日で、夏休みの最終日でした。
「明日から学校かー、嫌やなぁ」と、クラスメイトのヨシカワ君、そしてヨシカワ君と同じマンションに住んでいる1個上のアオヤギ君と、そんなことを話しながら公園で過ごしておりました。
すると、アオヤギ君が「肝試しに行こう。俺らのマンションの近くに火事で焼けたビルがあるやろ?俺があそこ入って一番上の階から手ぇ振ったるわ」と言い出しました。
ヨシカワ君とアオヤギ君のマンションの近くには、何年も前に火事で焼けた廃ビルがありました。
そこに肝試しに行こうというのです。
「えぇ、そんなん怖いわー。絶対に俺らは行かへんで」とか言いながら廃ビルに到着しました。
アオヤギ君は「じゃ、行ってくるわ!」とビルに入っていきました。
私はヨシカワ君と「大丈夫かなぁ…?」と目を見合わせていると、ヨシカワ君が「あっ!!」とビルの方を指差しました。
アオヤギ君はものの5分程度で最上階に到着したようで、窓から手だけ見えています。私達は「えぇ、アオヤギ君すごいな!」と話していると、アオヤギ君が戻ってきました。
私とヨシカワ君は「すごいな!怖くなかったん?」とアオヤギ君に尋ねました。すると、アオヤギ君は「え?めっちゃ怖かった…途中で戻ってきてん」と答えました。私とヨシカワ君は一瞬「え…?」と固まりましたが、アオヤギ君の様子を見ているとそれ以上は何も言わない方が良いような気がして、その日はそのまま帰宅しました。
そして翌日の始業式、校長先生は新学期の挨拶の中で、こう話しました。
「みんなの元気な顔を見れて、先生も大変嬉しいです。でも一つだけ残念なことがあります。6年1組のアオヤギ君が昨日の夜、マンションのベランダから落ちて今は入院しています」
昨日の肝試しのことが思い出され、私はゾッとしました。
その日から1か月、アオヤギ君は何とか退院してきました。
私は「なんでベランダから落ちたん?大丈夫?」と尋ねましたが、アオヤギ君は曇った顔で「ええやん、もうその話すんな」と何も語ってくれませんでした。
あの廃ビルの中で、アオヤギ君はどんな体験をしたのでしょうか。
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