たゆたう金魚
投稿者:YoyoYoyoY (52)
小学生の頃の話です。
夏祭りの神社の屋台で、金魚すくいをしました。真っ赤な金魚を5匹、袋に入れて持ち帰りました。
キンカ・キンキ・キンコ・キンヨ・キンロ
それぞれの個体に名前を付けて、金魚観察記録をノートに書き続けました。
金魚の寿命は5年から10年と言われますが、大事に育てるとそれ以上生きる個体もあります。
小指の先ほどの大きさだった5匹は、5年ほど経つと、4~5cmに成長しました。
メスのキンキと、キンカは卵をもち、1ミリほどの稚魚が生まれることもありました。
水草の隙間を行ったり来たりする稚魚はとてもかわいいものでした。
ある夏のことです。
台所のテーブルで、夏休みの宿題をしていたのですが、右肩に何かが降れる感触がありました。
「え?今、なんか虫でも飛んできた?」
妹に尋ねると、蚊ではないかと言います。
「蚊かあ~蚊取り線香炊こうか」
でも、何か違う気がします。
しばらくすると、やはり右肩あたりがサワサワします。
「あれ?金魚?」
私は何故か、それを金魚だと思いました。
胸騒ぎがしたので、ベランダの金魚鉢まで飛んで行きました。
そこには、赤いお腹を水面に浮かせた金魚の死骸が横たわっていました。
朝は元気だったのに、全部死んでる、何で?どうして?
私と妹は、泣きながら金魚を埋めに行きました。
エサも水替えもキチンとしていたので、何が原因だったのか、今でも分かりません。
ただ、私の右肩に触れたのは、やはりあの5匹だったのだと思いました。
最後の挨拶に来てくれたのか、早く私たちに気付いて欲しいという意思表示だったのか。
それ以来、私も妹も金魚を飼うことはしませんでした。
夜店の金魚すくいを見ると、5匹は天国で元気に泳いでいるだろうかと空を見上げてしまいます。
魚に名前をつけると魚に気持ちが宿り、死ぬ時に寂しいと道ずれに他の魚を連れていくと言うことです。
だから魚に名前は付けてはダメです。
一番おっかないのは、最後水槽に道ずれになる魚がいなくなり、飼っていた家族が連れていかれるって話です。