消えないお線香
投稿者:YoyoYoyoY (52)
その年の春のお彼岸は、体調不良や仕事の忙しさもあり、お墓参りに行けませんでした。
琵琶湖が見渡せる小高い丘の上に、大きな墓地があります。
その頂上に近い角地で、曾祖母は眠っています。
春と秋のお彼岸、お盆にはお参りして草刈りをしないと、近隣のお墓に迷惑が掛かります。
心苦しかったのですが、心の中でお詫びをしてお盆まで待ってもらうことにしました。
ようやくお盆休みが始まり、曾祖母の好きだった大福餅とバナナを携え、お参りに来ました。
予想通り、うちの敷地内に生えた雑草は、隣のお墓の前まで繁っていました。
幸いお隣さんは、まだ来てないようでした。
さっそく鎌で草刈りを始めましたが、そうとう頑丈な草のようで、手間取りました。
ようやく美しくなったので、水で清めお供えをしてお線香に火を付けました。
いつになく、火は勢いを増して燃えています。
お線香って、こんな燃え方をするものだろうかと不思議に思いました。
お経も唱え終わり、お暇しようと腰を上げますが、お線香はずっと燃えています。
「何か、このお線香変だよね」
主人に声をかけます。
「うん、そうだなあ」
主人も怪訝な顔でのぞき込んでいます。
何かを訴えるように燃え盛り、やっと消えました。
「ちょっと気になるから、もう1本炊いても良いかな?」
私は新しいお線香を取り出し、火を付けました。
すると、今度は静かに白い煙を立てています。
「おばあちゃんが、長いことほったらかして!
バチ当たりめ!って言ってるみたいだったよね」
「でも、2本目は穏やかになったから満足したんじゃないのかな?」
陽の傾きかけた琵琶湖は、白く輝き静かに一日を終えようとしています。
私たちは、合掌してその場を後にしました。
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