蜘蛛の糸と結界
投稿者:神助 (16)
その時Oさんの耳にはっきりと聞こえた。
「こっちだよー」
女の人の様な声が草むらのずっと先から聞こえる。
「こっちだよー、こっちだよー」
何度も呼んでいるのだ。
Oさんは友達に「待って、ちょっと止まって!危ないよ」と呼びかけた。
けれども静止の声も聞かずどんどん前へ進む友達。
「こっちだよー」
声はまだ聞こえる、Oさんは怖くなった、必死に追いかけた。
すると突然友達がピタリと止まった、勢いで背中にドンッ!とぶつかる。
「痛っ!なに!?どうしたの?」
Oさんが尋ねる。
Oさんの友達は一呼吸置いて
「これ……、何か気持ち悪い…。」
友達の目の前にはまるで行く手を阻むかの様な巨大な蜘蛛の巣が。
それもキレイに真っすぐ横に広がっていた。
「うわ、凄いね。引き返そうよ!」
そうして二人は元来た方に引き返す事にした。
その間もずっとOさんの耳にはあの声が聞こえていた。
車が見えてきた。
いつの間にかあの声は聞こえなくなっていた。
「ねえ、ずっと『こっちだよ』って呼んでいた人やっと静かになったね。」
「え?声?何のこと?」
あんなにはっきり聞こえていたのにOさんの友達には聞こえていなかったようだ。
Oさんは驚愕した。
「え!ずっと『こっちだよ』って誰かが呼んでいたじゃない!」
「うそ!そんなの聞こえなかったよ!」
呆然とする二人。
車の近くに行くまで戻るとキャベツ畑の様子を見に来たであろう農家のおじさんがいた。
「あんたたち、あの草むら入ったの!?危ないよ、この先崖だから。」
そう言われて二人は改めてゾッとしたそうだ。
もしあの時、あの場所に蜘蛛の巣がなかったら崖から落ちていたかもしれない。
Oさんの友達は呼ばれてしまったのだろう。
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