蜘蛛の糸と結界

虫には霊感がある。
蜘蛛や蛍、蝶、あと蝉もきっとそうだと私はみている。
特に蜘蛛の張る糸には結界の様な力があるんじゃないかと思っている。
二つの蜘蛛の巣が並列状に張ってあるところを見たことがある人は割といると思う。
その並列した蜘蛛の巣の間には必ずと言っていい程あちらの方(霊)を見かける。
しかもそのあちらの方はことごとく動けなくなっているのだ。

その蜘蛛の結界にまつわる話しを会社の隣の部署の人から聞いた。
隣の部署のOさん、少し年配の女性なのだがアウトドア好きでアクティブな人だ。
昼休み、共同の休憩室でたまたまOさんと一緒になった。
「先週の休みに日帰りでK県の岬に行って来たんだけど、ちょっと怖い事があったの。聞いてくれる？」

私が心霊好きと知っているOさんはこう切り出した。
「え、先週って台風前で天気悪かったですよね？？」
「うん、そうそう。でも折角の休みだったから。」
さすがOさん、悪天候にもひるまない！
凄いな、と感心しているなかOさんは話しを続けた。

「友達と二人で行ったんだけど、その友達が『地元の人しか知らない絶景の場所がネット載っていた。そこに行きたい』って。」
「でもね、その場所への行き方が詳しく載っていなくて。」
Oさんと友達は、はその例の絶景の場所を断片的なネットの手がかりだけで探したそうな。
車を走らせる事一時間、キャベツ畑とその先に海の見える坂道。
『これだよきっと、この先！』

Oさんの友達は嬉しそうにそう言った。
更に車を走らせ、もうこれ以上車では進めないというところで停車した。
見ると草が生い茂っていてネットで見た写真とはちょっと違う。
外は風が強かったものの幸い小雨になっており車から降りてみようという話しになったらしい。
車を降りるなりOさんの友達は
「こっち！こっち！」
と意気揚々と歩き出した。
目の高さまである雑草を物ともせず突き進むOさんの友達。
「ちょっと、待ってよ～！」
必死に追いかけるOさん。