誘いこむ甘水
投稿者:ぴ (414)
「この水美味しいよ」とあの声が耳元で聞こえてきたのです。
私はその声に誘われるようにして、小川の水を手でくんで飲みました。
本当に美味しくて、私は気づいたら一生懸命その水を飲みました。
しばらく正気を失ったように一心不乱に水を飲んでいたように思います。
そしたら風もないのに小川の水に波紋ができ始めて、気づいたら私の影の横に誰かの影が映っていたのです。
「誰?」と私は隣を見て聞きました。
気づいたら隣には知らない女の子が座っていたのです。
私が話しかけると女の子は奇麗な顔でニコッと笑いました。
そして聞き覚えのある声で私に「分からないの?」と聞きました。
それはいつも聞こえる姿の見えないあの声で、私にずっと話しかけてきていたのがこの子だと分かりました。
私は誘われるままこの子と小川の近くで一緒に遊びました。
気づいたら辺りは暗くなっていて、時間を忘れて夢中になって遊んでいたのです。
辺りが暗くなっているのに気付いた私は少し不安になり、「そろそろお腹すいたし帰る」とその子に言いました。
だけど遊び疲れて家に帰ろうとした私に、その子は「なんで帰るの?」と聞くのです。
その何とも言えない圧に少し怯んだものの「ご飯だから」と私は言います。
けれど女の子とは思えない強い力で、袖口を掴んで引き留められました。
「もっと私と遊んでよ」とその子が離そうとしなくて、私は困り果てました。
そして「明日また来る」とその子と約束したのです。
しぶしぶですがその子は手を放してくれました。
そして「約束は破ったらだめだよ」と言われ、強制的に指切りしたのです。
その子と別れて森を少し歩いていると、目の前にちょろちょろ光が見えました。
そしてなぜか私の名前を呼ぶ声が遠くからしたのです。
気づいたら私は顔見知りのおじさんに保護されていました。
どうやら私が家に帰ってこないという理由で、家族が近所の人に頼んで一緒に捜索してくれていたらしいです。
ギリギリで警察沙汰にはなりませんでしたが、私はご近所さんにかなり迷惑をかけてしまいました。
両親には拳骨をもらった後、思いっきり抱きしめられました。
すごく心配をかけてしまったらしかったです。
それからしばらく外出禁止になり、私は家で過ごさせられました。
前よりも母が過干渉になり、私は外で思うように遊べなくなりました。
あの一件以来、迷子になって危ないからとその場所は立ち入り禁止区域になり、私たちが作っていた秘密基地は取り壊されてしまいました。
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