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呪い・祟り

輝々さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

下り坂の小さな花瓶
短編 2022/11/04 08:55 830view

以前、横浜のとある丘の上にあるマンションに住んでいたときの話です。
JRの駅から平坦な道を5分ほど歩いた先にある、長さ100mほどの急な坂の上にそのマンションはありました。

横浜の中心街や、おしゃれな桜木町のエリアまでも自転車でいけてしまうような距離で、
私はそこでの生活に満足していました。

しかしある時、下り坂の終点にある狭い十字路に、小さな白い花瓶が供えてあることに気が付きました。
十字路の脇の、電信柱の足元にそれは置いてありました。

誰かがここで交通事故にあって亡くなったのかもしれない。

私はそう思って、目の前を通るたびにそっと心の中で手を合わせていました。

それから数日たった帰り道、その十字路を道の狭さに似合わない大型トラックが通りかかっているところに出くわしてしまいました。
私はトラックをよけるために電信柱のギリギリを歩いたのですが、その時にあろうことかあの花瓶を蹴って倒してしまったのです。

トラックが通り過ぎた後、私はあわてて花瓶を元通りに戻そうとしましたが、花瓶の縁が少し割れてしまっていました。
本当は花瓶を手入れしている持ち主を探して謝るべきだったのかもしれませんが、その日の私はそのままその場を後にしてしまいました。

それが、良くなかったのかもしれません。

その数日後、下り坂で妻が乗った自転車のブレーキが壊れ、下の交差点で転倒する事故がおきました。

幸い、車が通りかかっていないタイミングだったため妻は軽い怪我で済みましたが、自転車は完全に壊れ、
現場にはその自転車がぶつかって粉々に砕け散った花瓶が散乱していたそうです。

後で聞いた話ですが、その交差点は事故の名所になっていて、これまでに何人もの方が怪我を負ったり亡くなったりしていたそうです。
そして白い花瓶は私たちが引っ越してくる1カ月前に起こった死亡事故で亡くなったお孫さんを供養するために、
近所のご老人が供えていたものだったようなのですが、その方も妻が転倒した2日前にご病気で亡くなっていたとのことでした。

私たちが坂道のない家に引っ越したのは、それからひと月ほどのことでした。
いまはもうその交差点に花瓶はありませんが、これからも新しい献花が必要にならないことをただただ祈っています。

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関連タグ: #事故物件
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