鉄骨渡り
投稿者:GENGO (32)
しかしあるとき、遊びの流れが変わった。
1人で平均台遊びをしていた子供が翌日に
「俺は20m先まで行った」と言い出したのだ。
正直、嘘だったと思う。
子供が軽い気分で嘘をついてしまい、引っ込みがつかなくなったのだろうと思う。
当然に、他の子供から
「なら見ているからもう一度やれよ」
との声が上がった。
言い出した子も文字通り引き返せなくなったのだろう。
よし、見てろ、と平均台に上がった。
1m、2mどんどんと進んでいく。
15mくらい先までは行った。
この時点で当時の最高記録だったと思う。
そこでも下の川原からは高さ10m以上はあっただろうから。
たしかその時点では見物していた子供も彼を英雄視していたと思う。
凄い凄いと騒いでいた。誰一人、もっと行けとか言わなかったはずだ。
それだけ、そこから先の高さが恐怖なのはわかっていた。
だがその子は止まらなかった。じりじりとではあるがまだ先に行く。
もうこのときはギャラリー側が皆、止めに入っていた。
もういいよ、あぶないよ、と。
そして・・その子は行くことも戻ることもできなくなってしまった。
18mくらい先、川原からの高さで15mはあるだろう地点で。
完全に足がすくんでしまったのだろう。そりゃそうだ。
ギャラリーは、大丈夫か、とか、ゆっくり戻れ、と声をかけるしかなかった
。助けに行けるわけもない。できることなどない。
だがしかし10分、20分と時間がたっていくにつれ、ギャラリーもみな泣き始めてしまった。
私も泣いた。大変なことになった。もうあの子は戻ってこれない、すぐに落ちて死ぬ、と。
そして正直、死んだら可哀想とか悲しいではなく、死んだら俺たちの責任になる、と。
もっといえば「親から怒られてしまう」と。
正直に言うが、それが本音ですべてで泣いていた。少なくとも私は。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。