シーバの石
投稿者:ねこじろう (147)
窓から弱々しい朝の光が射す頃には、雨音はかなり小さくなっていた。
すると誰かがもの凄い勢いで入口のドアを叩きながら、わめいている。
「大変です!大変です!」
淳慈が入口のドアを開けると、そこにはトレーナー姿のスタッフの若い女性が青ざめた顔で立っている。
とにかく来て下さいと言われ、わけも分からす彼は彼女の乗ってきた軽トラックの助手席に座った。
5分ほど揺られて連れていかれたのは、町外れにあるプレハブ小屋の病院施設だった。
そこにはボランティアの医師と看護師が常駐している。
ドアを開けると床にたくさんのマットレスが敷かれていて、そこには頭に包帯を巻いた男の子や横になって点滴を受けるお年寄りとかがおり、一斉に淳慈たちの顔を見た。
女性スタッフは靴を脱ぎ、部屋の奥に走る。
彼も後に続く。
奥の壁の前には少し大きめのマットレスが敷かれていて、その前に白衣を着た医師と看護師が正座していた。
その横に淳慈と女性スタッフも並ぶ。
マットレスの上には大きな白い布が被せてあり、その下の方から人の膝から下の足が覗いている。
その浅黒い足にはあちこちに擦り傷があり血がこびりついていた。
それを見た途端、淳慈の心臓の鼓動は急に速くなった。
その足は彼がシーバにプレゼントした布製の紐靴を履いていたのだ。
医師は厳めしい目で淳慈と女性スタッフの顔を交互に見ると、その白い布の端に手を掛けゆっくりとまくっていった。
途端に女性スタッフは小さな悲鳴をあげ目をそらした。
淳慈は緊張した面持ちでそれを見る。
そこには……
シーバが仰向けになって横たわっていた。
彼の首と左腕、そして右足は胴体から離れており、切断部位から血にまみれた肉や骨が覗いている。
皮膚はどこも真っ黒で、あちらこちらにひどい傷があった。
胴体には焦げたランニングシャツが千切れたようにして残っている
「地雷を踏んだようです」
医師ができるだけ冷静な口調で言った。
若い看護師が続ける。
「かなりの数は撤去されているらしいのですが、町の北の方には地雷や不発弾がまだ埋まっているようです。恐らくこの子は誤って踏んだのでしょう。
今朝早く北方の河原で見つかったそうなんですが、何でまたあんなに酷い雨の時にあんなところに行ったんでしょうね……」
看護師は目を赤くしながら顔を伏せた。
怖いけど切ないお話ですね…
シーバはこれで成仏できてたらいいな。
シーバは約束を果たしたのですね。
切ない。
あなたもその石できっと幸せになれますよ。
トヨモトのアレ?
シーバ~~~~~