シーバの石
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2022/10/05
15:24
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シーバは昨日、淳慈にこう言った。
町の北方にある河原に行き『幸せの石』を見つけてきてプレゼントすると。
彼の頬には、いつの間にか熱いものが流れていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
淳慈はアパートの入口の前に立っている『アレ』に、恐る恐る尋ねた。
「シーバなのか?」
『アレ』は無言のまま被っている布のすき間から、か細い腕をゆっくりと出してきた。
指は閉じられ、げんこつを作っている。
彼は何か分からないが、そのげんこつの下に手をもってきた。
すると少しづつ指は開いていき、何かが、ポトリと手のひらに落ちた。淳慈はそれを目の前に持っていった。
それは『石』だった。
深い海の底のような美しい色合いをしている。
淡い光を微かに放っているような、ずーっと眺めていたい、そんな神秘的で不思議な『石』だった
「シーバ、ありがとう……」
そう言って淳慈が顔を上げたとき、もうそこには誰もおらず、トタン屋根に当たる雨の音だけがいつまでも続いていた。
【了】
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怖いけど切ないお話ですね…
シーバはこれで成仏できてたらいいな。
シーバは約束を果たしたのですね。
切ない。
あなたもその石できっと幸せになれますよ。
トヨモトのアレ?
シーバ~~~~~