玄関口には踵を踏んだ汚れたスニーカーが一足、片隅にポツンとあるだけだ。
「松山さん、すみませんがお邪魔しますよ」
型通りの挨拶とともにオーナーは靴を脱ぐと、廊下にあがる。
俺も浜中もあがった。
開いている右手の室のドアの隙間からオーナーが「松山さん、ここですか?」とうかがうように声をかける。
「どうやら、臭いはここからのようです」
鼻と口を押さえながらそう言うと、ノブに手をかけ開いていく。
そこは脱衣室だった。
右手に洗面台があり、正面に洗濯機がある。
その上に何故だか一冊の預金通帳とA4の紙が一枚無造作に置かれていた。
そして左側には折り畳み式のドアがあるから、その向こうが浴室だろう。
浴室からはシャー、、、というシャワーの音がしている。
間違いなく臭気は強まっていた。
明らかに怪しい雰囲気だ。
浜中がオーナーと俺の顔を交互に見渡すと真剣な顔で一回大きく頷き、折り畳み式ドアの取手を掴んで開けていった。
「松山、、、」
弱々しい声で呼び掛けながら中を覗きこんだその直後だ。
「う、うわあ!!」
突然けたたましい悲鳴とともに、浜中は後ろにしりもちをついた。
「どうしたんだ?」
言いながら、俺は駆け寄り浜中の両肩に手をのせる。
彼はブルブルと小刻みに震えながら、ただ浴室を指差している。
俺は勇気を出して一気にドアを開いた。
強烈な腐敗臭に混じって、錆びた鉄の臭いが鼻をつく。
そして中の情景が視界に入ってきた途端、冷たい何かが背筋を通り過ぎ、両膝がガクガクと震えだす。
それは目を覆うような惨状だった。
壁の上方に引っ掛けたシャワーヘッドから浴槽に向けて、水流が出続けている。
浴槽には血だらけの全裸の男(多分松山)が仰向けに横たわり、シャワーからの水流を浴び続けていた。
周囲を数匹のハエが忙しげに飛び回っている。
男は血の気を失った顔を天井に向けポカンと口を開けているのだが、その両目は洞穴のように真っ暗だ。






















文章がとても上手なので、怖さの伝わり方が凄かった
怖い……
Kというリサイクルショップの名前が知りたい…