亡くなった人が帰ってくる話
投稿者:大城 (1)
これは父に聞いた話です。
父方の祖父が亡くなり、四十九日の法要が終わった後、父とその兄弟一家は実家に集まり飲んだり食べたりと一家団欒の時を過ごしていました。
自然と花が咲くのは祖父の思い出話。楽しい時が過ぎ、すっかり辺りが暗くなった時のことです。
仏壇がある場所の、すぐ隣の窓が音もなくスーッと開きました。
父たちは皆その光景を目撃し驚きました。窓は畑に面していて、こんな時間に誰かが開けるとも考えられません。
父が窓から外の様子を窺うと、やはり誰もいません。
でも、誰も怖がったりはしませんでした。なぜならみんな「窓を開けたのはおじいちゃんだ」「みんなの話をこっそり聞きに来たんだ」となんとなく思っていたからです。
私の身にもこんなことが起きました。
母が病気で死んでからずっと放ったらかしにしていた遺品を、最近ついに重い腰を上げて片付けることにしました。
散々渋っていた父と一緒に(恐らく、母の思い出の品を見るのが辛かったのでしょう)母が残した大量の手芸用品や布の端切れなどを次々とゴミ袋に放り込んでいきます。
綺麗な物や完成品はさすがに残しましたが、それでも大きなゴミ袋十個以上のゴミが出ました。母が生前、一生懸命集めてきた布やボタンなどを捨ててしまうのはやはりいい気持がしません。そんな時ふと私は「死んだ母がこれを見たら怒るんじゃないか」と怖くなりました。
その時です。
玄関の網戸がシャーっと勢いよく開く音がしました。私は直感的に「お母さんだ!」と思いました。しかし父は何も聞こえなかったと言います。玄関に行ってみると、確かに誰もいません。
私の心配を父は笑いましたが、私は本気で仏壇に線香でも供えようかなと思いました。さすがにしませんでしたが。
親しい人であっても、死者が帰ってくるというのは非現実的でどこか恐怖を覚えます。もちろん、そうでない人もいるのでしょうけれど。
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