出来れば知りたくなかった父の秘密
投稿者:ねこじろう (147)
「ううう、、、」
何故か悲しげに泣きながら、鼻をすすっている。
「ううう、、、くすん、くすん、、、」
すると突然、男の声が聞こえてきた。
「大丈夫 何も怖くないよ」
しかも、この声は俺ではない!
声の感じからして、ある程度年齢の行った大人の男性だ。
声は続く。
「大丈夫、何も怖くないからね
怖くないから、これから、おじさんの言うとおりにす、、、」
耐えられず停止ボタンを押した。
─そ、そんな、、、嘘だろ、、、
真っ暗になった液晶画面を睨みながら、俺は1人呟く。
額から頬にジワリと流れる生暖かい汗。
喉裏に激しい心臓の鼓動を感じる
信じたくはなかった、、、
信じたくはなかったが間違いない。
俺はビデオの男性が誰なのかが、分かった。
そして同時に脳裏には、かつて実家周辺で起こった「幼女神隠し事件」というものがよみがえってきた
「幼女神隠し事件」というのは、今から10年ほど前に、俺の実家のあるF 市で起こった連続幼女失踪事件だ。
市内に住む小学生にもならない女の子4人が、次々と失踪した事件で、警察、自衛隊、地元のボランティア総がかりで約1年に渡り、大捜索を敢行したのだが、結局、一人も見つからなかったのだ。
その頃、俺は既に結婚していて、隣の県のマンションに住んでいたのだが、この事件は全国的にも報じられており、ある程度の内容は知っていた。
あの当時、妻とともに実家に帰った俺は、こっそり母に、ある相談を受けていた。
その相談というのは、夫婦二人にはあまりに家が広すぎるから、売り払ってアパートか施設に住みたい、と思うのだが、どうしても父が家を手放したくない、と言っている。
何とか説得してほしい、と。
これで、全てが繋がった。
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次の休みの日のこと。
俺は一人、自宅から車で1時間かかる地元の埠頭まで走ると、突堤の端まで歩き、あの忌まわしいハンディカムを海に投げ捨てた。
出来ればそのビデオ売ってほしかったわ。