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不思議体験

isolaさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

海で溺れたら謎の生物に助けられた話
長編 2022/09/08 16:20 6,816view
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意識を取り戻したHちゃんと救護室前のベンチでかき氷を食べていると、大人の男性が担架で運ばれてきました。

救護スタッフ達の様子は一様に切羽詰まったものだった事を覚えています。

スタッフは担架に乗せられた男性を救護室に運び入れたのでその後の経過は分かりませんが、誰かの「息してないぞ!」との怒鳴り声に近い大声と、横を通り抜ける際に男性の足首にHちゃんのものと似通った手形が刻まれているのを見てしまい、私は心の何処かで「ああ、あのバケモノがやったのか」と独白しました。

後日、この海水浴場で死者が出たと地元新聞の片隅に乗っていましたが、その死の原因にはあの青白い皮膚をした単眼のバケモノが関わっている筈だと私は直感しました。

しかし、もしHちゃんの足を引っ張った犯人があのバケモノだとしたら、どうして私とHちゃんを引き上げてくれたのでしょうか?

どうしてわざわざ沈めた相手を助けたのか。
その理由を考えれば考える程泥沼にはまる感じがしましたが、ある時、私は一つの可能性に行き当たりました。

あのバケモノが単体では無く、複数いたらどうでしょうか。

もし、あの時あの海にあのバケモノが数体潜んでいたとしたら、人間に悪意を持って近づいた個体と善意を持って近づいた個体が居たのではないでしょうか。

Hちゃんと死亡した男性を沈めたのが悪い個体で、Hちゃんと私を引き上げてくれたのが良い個体だったのかもしれません。

何の確証も無い私の考えですが、私には私とHちゃんを助けてくれたあのバケモノだけはどうしても悪い生物には見えなかったのです。

余談ですが、バケモノの話はHちゃんと私だけの秘密にしています。
Hちゃんも溺れた当初はバケモノの容姿について必死に親に伝えていましたが、当然ながら子供の証言を丸ごと信用する訳がないので、物凄い速さで迫ってきた変質者程度の認識に補完されてしまったのです。

その為、青白いバケモノの話は私とHちゃんだけの秘密の共有体験になったのですが、私達が中学に上がる事にはHちゃんはバケモノの事や、そもそも海で溺れた事さえ忘れていました。

今となっては私も子供だったから変質者をバケモノと認識してしまったのではと思うようになりましたが、夏が来て海に行く度にあのバケモノの姿を連想してしまいます。

皆さまも海に入った際には深場にはご注意ください。

4/4
コメント(5)
  • 怖いけど面白かった

    2022/09/08/22:51
  • 怖いけどちょっと夢のあるお話ですね

    2022/09/09/19:19
  • すごい良いお話でした。海に囲まれた島に住んでますが、特に変なものには会ったことないので、会ってみたいなと思いました。(笑)

    2023/03/12/19:25
  • バニップ(bunyps)じゃないですか。?

    2023/03/13/09:08
  • 怖いよぉ〜

    2023/04/14/15:04

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