海で溺れたら謎の生物に助けられた話
投稿者:isola (3)
海に浸かった状態で心肺蘇生などできる筈もなく、このままHちゃんが目を覚まさなかったらどうしようかと狼狽えていましたが、とりあえずHちゃんの背中を叩きながら必死に声掛けをしていると、「ゲホッゲホッ」と水を吐き出してくれました。
「Hちゃん!」
Hちゃんの意識が戻ったのを確認した私は思わずHちゃんに抱き着きましたが、Hちゃんは「ゲホ……くるじい……」と未だ苦しそうにしていたので、一先ず浮き輪を頭から強引に被せて、浮き輪を装備させたHちゃんを浮き代わりにして海浜辺までバタ足で配達しました。
途中、思い出したかのように振り返って後ろを見ましたが、凪の海面が漂っているだけで、あのバケモノの姿はありませんでした。
何となくですが、Hちゃんを配達している間、海面に顔をつけて海中を隈なく見回してみましたが、あの青白い肌のバケモノの姿は見かけなかったのです。
浅瀬に辿り着くと、私はHちゃんを砂浜に座らせてすぐに母達を呼びました。
母は慌てた私を見て「どうしたの!」と不安に駆られた顔を浮かべていましたが、Hちゃんが溺れた事を伝えると隣に居たHちゃんのお母さんは顔面蒼白になっていました。
ただ、Hちゃんをビーチまで連れて戻った事を付け足すと少しだけ肩の荷を下ろしており、父親を呼び立ててはHちゃんを救護室まで運んでいくのでした。
幸い、Hちゃんは少し水を飲んだだけですぐに良くなると診断されたので、Hちゃんをビーチまで運んだ事に対してHちゃん両親から執拗に感謝されてむず痒い気持ちになり、少し頬を赤くしていたかもしれません。
そんな中、医療スタッフの方が妙な事を口走るのです。
「お嬢さんの足首に手形があるのですが、心当たりは?」
手形?
私を含めた同行者は、スタッフに指差されたHちゃんの足首を吟味します。
確かに誰かが強く握った様な大きな手形がくっきりと残っていました。
ただし奇妙な事に、その手形には無数の窪みと言いますか、例えるのならば魚の鱗の様な線が刻まれているのです。
Hちゃんの手形に言及したスタッフは、万が一、Hちゃんが誰かに故意に足を引っ張られて溺れたとしたら事件に該当すると理由から、私達に確認を取ってきたのです。
手形の大きさからして子供の私では不可能なので、私が疑われる事はありませんでした。
しかし、当時Hちゃんと一緒に居た手が届く範囲には誰も居なかったと話した事で、大人達は怪訝そうに首を傾げながらもHちゃんの手形を見つめていました。
スタッフの方も普段ならば手形を見つけた段階で警察に連絡するか決めあぐねるらしいのですが、Hちゃんの足首に刻まれた奇妙な手形は何と指が四本しかなかったのです。
そのせいで大人達の表情はだんだんと陰鬱と強張った表情に転がっていきました。
「〇〇ちゃん、本当に誰も居なかった?」
確認の為にHちゃんの父親が目線を合わせて訊ねてきたので、私は流れる様に海の深淵の方へ出かけた事を話してしまい、その瞬間に母から「アンタあれほど遠くに行くなって言ったでしょ!」と怒られてしまいました。
私が母に叱られた事で話は脱線してしまいましたが、Hちゃん両親もHちゃんが無事だった事から一先ず手形の件は注意喚起でとどめてもらうようスタッフに頭を下げ、Hちゃんの看病に努めました。
私はと言えば、その後も母から何度も「近くに居た大人が近寄ってこなかった?」とか「もしかしたら海中から忍び寄ってHちゃんを引っ張ったのかしら」
だとか推理小説の様な事を言われましたが、見てないの一点張りで躱します。
こんな事になったので海水浴はお開きとなり、Hちゃん家族は看病の為に救護室に入り浸り、私達一家は基本的にはビーチで海を眺めながら時間を潰し、時折Hちゃんの所に飲み物と食べ物を差し入れるついでに様子を窺ったりしました。
それから暫くするとHちゃんが目を覚ましたので、さっそくHちゃんの両親が優しく無理が無い様に事情を聞きだしており、Hちゃんは「何か白いのが海の中に居た」と話したそうです。
その話を聞いた時、私はあのバケモノの姿を連想しましたが、Hちゃん曰くその白い生物が物凄い速さで近寄ってきたと思ったら足を思いっきり引っ張られたと言うのです。
両親が「どんな人だか覚えてる?」と聞きますが、Hちゃんが「んー、顔は無かったよ。目が一つだけ」と答えるので、両親はどう切り返すべきかと浮かない表情のまま困惑していました。
結局、Hちゃん自身が動転していたか、子供だから人相を覚えていないと判断されて犯人捜しは有耶無耶になりましたが、数時間後に今回の騒動が殺人事件に発展したのです。
怖いけど面白かった
怖いけどちょっと夢のあるお話ですね
すごい良いお話でした。海に囲まれた島に住んでますが、特に変なものには会ったことないので、会ってみたいなと思いました。(笑)
バニップ(bunyps)じゃないですか。?
怖いよぉ〜