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呪い・祟り

ねこじろうさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

1985
長編 2022/09/04 17:34 14,158view
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皆とともに懐かしそうに手紙を見ている酒井田のそばに山田先生が近づくと、神妙な顔でこう言った。

「酒井田くん、きみ蒲生くん憶えてる?」

唐突な山田先生の質問に、酒井田は少し驚きながら「はい、憶えてますが」と答える。
すると先生は一個のペットボトルを酒井田に見せた。
そこには、蒲生の氏名が表書きされている。
山田先生が続けた。

「きみも知ってると思うが、残念ながら蒲生くんは亡くなってこの世にいない。
彼は3学期の最後辺りはほとんど休みがちで、このペットボトルを皆で埋めた日も欠席していたんだ。それで私は彼の家まで赴いて、直接この企画に参加してほしい旨を伝えた。
そしたら彼は快く応じてくれて、その場で手紙を書きペットボトルに入れると、こう言ったんだ。
『多分僕が将来、同窓会に参加することはないと思う。だからその時になったら先生、これを酒井田くんに手渡してほしい』と」

酒井田は山田先生から蒲生のペットボトルを受け取ると、
キャップを開けて、手紙を取り出す。
そして緊張した面持ちで便箋を開いてみる。
そこには、角張った癖のある文字が数行並んでいた。

─酒井田くん、久しぶり。
同窓会は楽しんだかい?
きみがこの文章を読む頃には残念ながらもう僕はこの世にはいない。
3年A組というクラスでは何の楽しい思い出もなかったけど、それでもクラスの皆や山田先生にはいろいろお世話になったと思う。だから皆にどうしても捧げたいものがあるんだ。
それで酒井田くんにお願いしたい。
校庭の端に立派な御影石の忠魂碑があるだろう。その真後ろにあるモノを埋めたんだ。金庫なんだけど、ダイヤル式ロックになっていて4桁の数字を揃えると開くはずだ。

番号は1985。そう僕やきみが生まれた年だ。
中には僕からの心をこめたものが入っている。
だからそれを掘り出して、皆で金庫を開いて見てほしい。
では3年A組卒業生の皆に幸せな未来が来ることを願い、筆をおくよ。

秋の風たちがグランドの真ん中辺りで戯れていた。
辺りは大分薄暗くなっている。
酒井田は便箋を両手に持ったまま、北側に視線を移した。
10メートルほど向こう側に、寂しげな佇まいで忠魂碑が立っている。
遠い昔、かつての戦争で犠牲になった若い人を弔って作られた石碑だ。
彼は、山田先生やクラスメートに蒲生からのメッセージを伝えると、石碑に向かって歩きだした。
他の者たちも、黙って後に付き従う。

3/5
コメント(1)
  • 復讐...

    2022/09/10/01:34

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