1985
投稿者:ねこじろう (147)
「マジか?
だからあいつ化学だけは成績ダントツだったのか。英語や数学はからっきしダメなくせに、化学だけは、全国模試で毎回5番以内に入ってたもんな」
早島の言葉に、美優が続ける。
「そうそう、自宅の庭の片隅にプレハブ小屋を親に作ってもらい、家にいる時は、そこにずっと籠って何か変な実験をしてたらしいよ」
するとホール前の演壇に、当時の担任だった山田が立ち、マイクでしゃべり始めた。
年齢はもう70は過ぎてるはずなのだが、グレーのスーツの上下をビシッと着こなしている。
「みなさん、宴もたけなわになってきましたが、ここで一つ、わたくしからご提案がありまして。
みなさんは覚えておられるでしょうか?
3年A組最後の日。つまり卒業式前日の日。
各々の将来の夢を書いてもらった手紙を空のペットボトルに入れて、校庭の隅っこに埋めたことを。
その時、わたくしはみなさんにこう言いましたよね。
これは将来同窓会を行った時に掘り返して、もう一度中身を見ましょうと」
ホール内に歓声が沸き起こった。
山田先生は続ける。
「そうです。今日がその日なんです。
奇しくも、ここは学校のすぐそばのホールであります。
みなさん今から、手紙を見に行きましょう!」
山田先生の言葉に、ホール内のボルテージは一気に上がった。
ヤ!マ!ダ! ヤ!マ!ダ! ヤ!マ!ダ!
意味不明なヤマダコールが沸き起こる。
さっそく先生を先頭に当時の生徒たち15名が市民ホールをあとにし、ぞろぞろと懐かしい校舎へと向かった。
日曜日のため、生徒の姿はほとんど見られなかった。
厳めしい石の正門を通り抜け、古びた校舎を横目に夕陽に染まるグランドを並び歩く。
たどり着いたのは、グランド隅っこにあるバックネットの裏。
そこにあるひときわ大きな楠の木の下にペットボトルは埋められている。
男子の数名は山田先生が準備していたスコップを受け取ると、徐に掘り返しだした。
50センチほど進んだ時点で一個めが見つかり、あとは芋づる式にどんどん見つかった。
ペットボトルには黒マジックで氏名が書かれており、各々自分のものを見つけると満面の笑みで手元に持つ。
山田先生の合図で皆はボトルの蓋を開け、中にある手紙を引っ張りだすと、開封し興味津々で見だす。
あちこちで起こる感嘆の声。
復讐...