姥捨山
投稿者:九遠 (1)
そう思いながら僕は両親分の布団が並ぶ寝室で一人眠りにつくのでした。
大人達は今頃酒でも飲んでワイワイやっていることでしょうが、今はそんな喧騒が恐怖で痩せ細った僕の神経を立て直してくれる癒しです。
そして、大人達の声が子守唄となり、やがて僕は眠りにつきました。
どれくらいの時間が経ったのか分かりませんが、ふと僕は奇妙な音で目を覚まします。
ギィ…という音は縁側を歩く際に鳴る床の軋みで、祖父母の家の特徴です。
そんな軋みの音が僅かに僕の耳に届いたのが目を覚ましたきっかけでした。
ふと隣を見れば空の布団があり、まだ大人達の酒盛りの声がリビングから聞こえている事から両親が寝ていない事が分かります。
縁側がある廊下の先にトイレがあるので、きっと誰かがトイレに行っているのだと思い、僕は再び目を閉じるのですが、どうにもその軋みは僕が眠るこの部屋に向かっている事が分かりました。
ギィ…。
大人にしては随分と遅く、子供にしては軽い。
そんな音が等間隔で僕の耳に入るのですが、やがてもう一つ別の音、声が聞こえるのです。
『……ぇぇぇ……』
音で表せば「え」と発音しているのか、ひどくくぐもった子供か女性の様な声が小さく聞こえてきました。
それが床を踏み抜く軋みの音と連動する様にして、僕の居る客間へと近づいてきます。
声質から女性だと判断した僕は、それぞれの家の母親を想像しますが少し違和感があり却下します。
どちらかと言えばもう少し年老いた様な声色、そう、祖母に近い様な気がします。
しかし、祖母の声質とはやはりこれも違うような気がして、では一体誰なのかという疑問が僕の脳内を搔き乱しました。
『へぇぇ……』
そんな事を考えていると、声は僕のほぼ真後ろ、障子を隔てた先で聞こえ、思わず背筋をピンと張ります。
妙な冷や汗が噴き出ると、僕は布団を深く被り直し、障子に背中合わせに身を丸くしてじっと震えて待ちます。
ズ……ズズ…
障子を引く音が更に僕の焦燥感を煽ります。
確実に何者かが僕が眠る客間へ足を踏み入れようとしているのです。
単純に考えればそんな事をするのは母親か祖母くらいなものですが、どうにも家族や親戚とは異なる不気味な気配に僕は跳ね上がる鼓動を抱えて押し黙る事しかできませんでした。
『ええなぁ……ええなぁ……』
声の主は祖母に近い年老いた様な女性のものでした。
ただ、殆ど頭の後ろから聞こえたその声色は、僕が知る限りでは親戚の中にはいません。
その段階で他人が部屋に入り込んできた恐怖もありましたが、何よりも、喉を絞めた様な掠れた声や息遣いが僕の背筋を凍らせるには充分でした。
確実に何かが僕の背後、枕元に立っています。
何者かが敷布団を踏み込んだ自重で枕元の生地が沈んだ様に引っ張られた感覚が伝わってきます。
ちょっと長かったけど読み応えあって面白かったです
埼玉に姥捨山あるって話を思い出した
夢に出そう
あばばばばばばばば
長野県に姨捨って地名あるよ…
ググってみてください