禁足地と人柱
投稿者:セカンド (1)
俺の声に反応するように親父が振り向くと、祖父もパッと振り返った。
ただ、俺が「ここどこ?」とか「なんで縛られてんの俺」と問いかければ、親父は「俺が誰だか分かるか?」と逆に一貫して訊ねてくる。
これでは埒が明かないと観念した俺が「分かるよ、親父」とめんどくさそうに答えると、親父は祖父と顔を見合わせた後、祖父が俺の頭上までやってきて「少しそのままで我慢しとけ」と念入りに人差し指を口許に立てた。
暗に静かにしていろと忠告しているのだろうが、俺もこんな訳の分からない状況で騒ぎ立てる程馬鹿ではない。
ただ、暫く神主の祓詞というのか分からないがそんな言霊を黙って聞いていると、死んだ様に動かなかったSが芋虫の様に暴れ始めた。
「キョオオオオ!キョオオオオ!」
その叫び声を聞いた俺は、あの出来事が夢でなかったと痛感した。
そして、Sが叫ぶなり、伯父がSを足蹴にして「出ていけ!」と繰り返す。
するとSは再びぐったりと横たわり静かになるが、数十分経つとまた奇声を上げ、奇声を上げては伯父が足蹴にして鎮める、と言った工程を何度も見せつけられた。
時間にして3時間は経ったかもしれない。
もう手足の感覚が無くなりかけていた頃、神主の言霊が終わった。
スッと立ち上がった神主は「お疲れさまでした」と祖父達にお辞儀すれば、祖父たちも深々と頭を下げる。
「どうなるんでしょう」
あの祖父が恭しく伺い立てれば、神主は「一先ずは様子見と言った所でしょうか」と芳しくない表情を浮かべた。
その言葉を受けた伯父はひどく落ち込み憔悴しきっていたが、親父が俺の拘束を解いてくれると、俺はやっと解放された充足感から思いっきり背伸びして体を解した。
「Sは?」
俺が親父越しの祖父に訊ねると、祖父は深くため息をつく。
「暫くは会えんと思え」
祖父は感情を殺した様にそう答えた。
その理由を確かめたかったが、親父が俺をその場から遠ざける様にして押してきたので、俺はそのままお堂から出ていく事となり、親父と一緒に境内を歩く。
恐らく、このまま祖父の家に戻る事は無言の親父の背中を見て感じとれた。
道すがら、黙っていた親父が重たい口を開く。
「あそこで何か見たか?」
そう問いかけながらも足並みを崩す事のない親父を見て、俺は山中での事を振り返る。
Sに続いて二又の分かれ道に侵入し、暫く歩いて所でSと一緒に白いものを見た。
そして、その白いものを見たと言い出したSが突然おかしくなった事を親父に話す。
「その白いものをはっきり見たか?」
親父の物言いに少し違和感を覚えたが、俺は記憶している限りの情報を何とか絞り出す。
白いもの。
白い影。
人影の様なもの。
そう言えば、木の陰から飛び出した白いものは、まるで人が覗き見る様な仕草と類似していた。
こう、壁に手をつけてぬっと顔だけ覗く様な。
キョオオオオ!!
これぞ洒落怖って感じで面白かった
洒落怖入り候補ですね
個人的にはやっぱり小説っぽいのよりこういうテイストのほうが好きだな
Youtubeで聴きました。面白かったです。
おらこんな村嫌だ~。
似たような怖い話は、過去たくさん読んだり聞いたりしたから、なんとなくこうなるんだろうなと先は読めた。どんなに手を尽くしても助からない、足を踏み入れた段階で、死亡フラグが立つ人間が出る。命にも関わる話ような話なのに、大事な家族にきちんと伝えない他所の土地から嫁いできた嫁さんたちは、ブチ切れるのは当たり前。そんな、ツッコミどころ満載のはずの定番中の定番怪談でありがなら、ここまで読ませる文章力と表現力と破壊力。
親父さんの言う通り、「冗談だよ。冗談。」 「作り話だよ。当たり前だろう。」とビクビクしている。俺も田舎者。
凄く良かったです。
五回目の12年で60年。父親は5歳だったとしても、65歳、祖父は80~90歳。
高校生の俺は16~18歳。
かなりの高齢での息子なんだね。
↑別に父親、祖父が5回全部やったとは書いてなくね?
家族とか親族、村の人間って書いてあるんやで祖父の父とかがやったんじゃね
間違ってたらすまん
じわりじわり・・・と、怖さが増していきました。
方言がまんま地元と同じだから更に怖い
こええええええええええええ
キヨオオオオオオオオ!!!!!!!