禁足地と人柱
投稿者:セカンド (1)
「あれ?親父達どこ行った?」
親父達にバレない様に距離を取っていた事が裏目に出た。
懐中電灯も持っていない俺とSは、こんな山中で完全に親父達の姿を見失ったのだ。
とはいえ、ここまで一方通行だった事もあり、そこまで窮地に陥った感覚も無く、最悪引き返せば家に帰れると分かっていたので至って平静を保てた。
「あっちかな?」
Sが指差したのは、ちょうど二又に分かれた片方の道。
そっちの道には月明かりで薄っすら見える程度だが、パーテーションポールの様な進入禁止の柵に弛んだロープが張られている。
そのロープには等間隔で紙垂がぶら下がっており、静かに揺れていた。
「行ってみようぜ」
俺はSに言われるままロープを潜ると、少し湿り気を帯びた空気の中を進み始める。
少し環境が変わったのが、生える木の種類や、歩いている地面が湿地帯の如くぬかるんでいる事で分かる。
ただ、夜目がそこまで効かないせいか、親父達がこっちの道を進んでいる確証は得られない。
ただSが進む後ろを俺がついていく、それだけだった。
時折鳴いているアオバズクの声を余所に、俺達は随分と深くまで入り込んだ。
夏場だと言うのに冷たく張り詰めた空気が肌を突き刺して少し肌寒い。
空気中に過剰な水分が含まれているのか、髪もべったりとしてきた。
それでもSが足を止めないのは、僅かな月明かりで進行方向だけは見えたからだろう。
しかし、俺はSの後ろ姿を眺めながらも、親父達は何の目的でわざわざこんな所まで足を運ぶのだろう、と漠然と考え事に耽っていた。
「おい、〇〇、聞いてるか?」
「んあ、え?何?」
突然、Sに呼び止められて俺は顔を上げた。
どうやら俺は自分の世界に浸っていたらしく、今の今までSの呼び掛けに反応できなかったようだ。
Sは呆れた様に俺の肩を叩くと、明後日の方角を指差す。
「だから、アレだよ、アレ。見えるか?」
いつになく小声で話すS。
俺は何となく親父達の軌跡を見つけたか、当人たちの姿を捉えたのだと察知し、同様に声を殺した。
そして、Sが指し示した方角に目をやるが、親父達の姿が何処にもなかったので「親父達どこ?」と訊ねれば、「違う、そうじゃなくて」と頭を揺すった。
「あの白いのだって」
Sは再び指を立てて俺の視線を誘導すると、何十メートルと離れた先の雑木林の中、とある一本の木の陰から白いものがにょきっと覗くように飛び出しているのが分かった。
暗闇に白い色が浮かび上がるのは実に奇妙だが、Sがそれを俺に教えたかったと理解できた。
キョオオオオ!!
これぞ洒落怖って感じで面白かった
洒落怖入り候補ですね
個人的にはやっぱり小説っぽいのよりこういうテイストのほうが好きだな
Youtubeで聴きました。面白かったです。
おらこんな村嫌だ~。
似たような怖い話は、過去たくさん読んだり聞いたりしたから、なんとなくこうなるんだろうなと先は読めた。どんなに手を尽くしても助からない、足を踏み入れた段階で、死亡フラグが立つ人間が出る。命にも関わる話ような話なのに、大事な家族にきちんと伝えない他所の土地から嫁いできた嫁さんたちは、ブチ切れるのは当たり前。そんな、ツッコミどころ満載のはずの定番中の定番怪談でありがなら、ここまで読ませる文章力と表現力と破壊力。
親父さんの言う通り、「冗談だよ。冗談。」 「作り話だよ。当たり前だろう。」とビクビクしている。俺も田舎者。
凄く良かったです。
五回目の12年で60年。父親は5歳だったとしても、65歳、祖父は80~90歳。
高校生の俺は16~18歳。
かなりの高齢での息子なんだね。
↑別に父親、祖父が5回全部やったとは書いてなくね?
家族とか親族、村の人間って書いてあるんやで祖父の父とかがやったんじゃね
間違ってたらすまん
じわりじわり・・・と、怖さが増していきました。
方言がまんま地元と同じだから更に怖い
こええええええええええええ
キヨオオオオオオオオ!!!!!!!