禁足地と人柱
投稿者:セカンド (1)
「何だろアレ」
俺は素直に思った疑問を口走ったが、これが間違いだった。
Sは俺の疑問を晴らす様に、自ら「ちょっと近づいてみるか」と言い、率先して歩きだす。
俺は別に夜道とか幽霊とか平気な方だが、流石に真っ暗闇の雑木林を闊歩できる程には肝が据わっている訳ではない。
こういう場面でのSの無謀とも言える勇気には敬意を表したい気分だったが、速足で進んでいくSの後ろを俺はゆっくりと追っていった。
すると、Sが突然立ち止まる。
何故立ち止まったのかは分からないが、追い付けばすぐにわかるだろうと思い、俺は「何かあった?」と小声で話しかけながらSとの距離を詰める。
Sは微動だにしなかったが、やがて俺はSに追いつくと、肩に手を置いて「S?」と問いかける。
Sは椅子を回転させた様に平行を維持して首を回した。
だが、振り返ったSの顔面を見て俺は「うわっ」と絶句する。
Sの両目と口に大量の蛾が張り付いて体を重ね蠢いていたのだ。
だと言うのに振り返ったまま硬直したSを前にして、俺は尻もちをつく。
「S!?だ、大丈夫か!」
と震える声でSを見上げる俺。
Sは暫く突っ立ったままだったが、すぐに正気を取り戻したかのように「うえッ!ペッ!ペッ!」と顔面に張り付いた蛾を払い除けて唾を吐いた。
「な、なんだ!?ペッ!うげッ」
ひどく取り乱していたが、通常のSの反応を見て、俺は何処か安心していた。
「大丈夫?」
「お、おう」
一通り不快感を吐き出したのか、Sは落ち着きを取り戻すと周囲を見渡しては不思議そうに首を傾げる。
「どうかした?」
俺が純粋に疑問を投げ掛ければ、Sは「いや」と口籠る。
しかし、再び周囲を見渡したかと思えば「あ、あ、あ」とわなわなと口許を震わせた。
その視線の先を追うと、離れた場所の木の陰からさっき見かけた白いものが同じように覗き込んでいる。
アレはいったい何なんだ、と目を凝らしていると、今度は突然Sが「キョオオオオ!キョオオオオ!」と奇声を上げ始めた。
突然すごい声量で叫ぶので俺は心臓が飛び出そうなほど驚く。
「S?」
振り向けば、Sの顔はねじれた様に大きな口を開いていた。
まるで気が狂った様に「キョオオオオ!」と変な奇声を繰り返していると、身をよじらせて地面にひっくり返り、芋虫の様にくねくねくねくねと暴れ始める。
そして、暴れながらも「キョオオオオ!キョオオオオ!キョオオオオ!」と、動物が仲間を呼ぶように連呼するのだ。
キョオオオオ!!
これぞ洒落怖って感じで面白かった
洒落怖入り候補ですね
個人的にはやっぱり小説っぽいのよりこういうテイストのほうが好きだな
Youtubeで聴きました。面白かったです。
おらこんな村嫌だ~。
似たような怖い話は、過去たくさん読んだり聞いたりしたから、なんとなくこうなるんだろうなと先は読めた。どんなに手を尽くしても助からない、足を踏み入れた段階で、死亡フラグが立つ人間が出る。命にも関わる話ような話なのに、大事な家族にきちんと伝えない他所の土地から嫁いできた嫁さんたちは、ブチ切れるのは当たり前。そんな、ツッコミどころ満載のはずの定番中の定番怪談でありがなら、ここまで読ませる文章力と表現力と破壊力。
親父さんの言う通り、「冗談だよ。冗談。」 「作り話だよ。当たり前だろう。」とビクビクしている。俺も田舎者。
凄く良かったです。
五回目の12年で60年。父親は5歳だったとしても、65歳、祖父は80~90歳。
高校生の俺は16~18歳。
かなりの高齢での息子なんだね。
↑別に父親、祖父が5回全部やったとは書いてなくね?
家族とか親族、村の人間って書いてあるんやで祖父の父とかがやったんじゃね
間違ってたらすまん
じわりじわり・・・と、怖さが増していきました。
方言がまんま地元と同じだから更に怖い
こええええええええええええ
キヨオオオオオオオオ!!!!!!!